水中を立体で捉え攻略する「3Dアジング」のすべて~田中良樹氏が最新アジングテクニックをご紹介!~

2025年、ダイワに若き新星アングラーが加入した。YOSHIKIの愛称で関西エリアを中心にライトソルトゲームを楽しむ田中良樹さんだ。今回は動画ロケのデビュー戦ということで、いきなり愛媛県というアジングの聖地で行うことに。田中さんが常に提唱する水中を立体で捉えて攻略する『3Dアジング』で聖地巡礼を行なってもらった。


期待の新星がアジングの聖地で躍動!


 普段はアジング以外にもイカやシーバス、クロダイといったさまざまなターゲットを狙い、足繁くポイントに通うという田中さん。しかし、今回のロケ地となった愛媛県はアジはもちろん、他のターゲットを狙う場合でも今まで一度も釣りで訪れたことがない。

 愛媛県といえば瀬戸内海と宇和海に面し、特に宇和海側は豊後水道を通じて太平洋と繋がっており、黒潮の影響を色濃く受ける。アジ以外にもイカや青物といった豊富な魚種で楽しめる、ライトソルトゲームの聖地の1つと言える。

「今回が映像ロケのデビュー戦ということもあり、無理を言ってここ愛媛県エリアでの釣りをお願いしました。釣れて当たり前と思われるかもしれませんが、それでもどうしても僕の釣りで、しっかりとパターンにハメられるかを試してみたかったのです」と田中さんは力強く話す。

今回が初動画ロケ、そして初場所という田中さん。どんな釣りを披露してくれるのかが楽しみだ。


アジングの聖地でいざ実釣も初場所の洗礼を浴びる


 宇和海側の釣り場に着いた田中さんに今回どのような釣りを披露してくれるのかを訪ねると「愛媛に来たからには、まずは純粋にアジングを楽しみたいと思っています。まったくの初場所になりますので、状況を探り徐々にパターンにハメて、あわよくばデカいサイズも狙っていきたいと思います」と話してくれた。

 最初のポイントは比較的大きなワンドの先端に長く伸びた堤防を選んだ田中さん。堤防の先端にはエギンガーと思われる先行者が既に釣りを楽しまれていたので、その途中で足を止めタックルの準備を開始した。先端の釣り人に挨拶をし、しばし情報交換をする田中さん。どうやらアジは一週間前まではサイズが揃いながら数釣りで楽しめていたが、一昨日あたりから急に釣れなくなったとのこと。

 この少しの季節の進行で水温は上がり、状況は大きく変わってしまったようだ。実際、今回の実釣ではサルパ(ホヤの仲間に分類されるプランクトン性の尾索動物)が大量に発生しており、リグがこれに乗って落ちていかないといった事態に陥ってしまった。 

ファーストポイントはナイトで実績のある沖に伸びた堤防。果たして夕マヅメでアジは顔を出してくれるのか⁉



3Dアジングを可能とするタックルセッティング術

 田中さんが提唱する「3Dアジング」はラインテンションを張らず緩めず保つ「ゼロテンション」の状態から、僅かなラインの変化でアタリを察知し、しっかりとしたアワセを入れて掛けていく攻撃的な釣りが特徴だ。そのため田中さんが持ち込むタックルは強気そのものだ。

 実際には「月下美人AIR 53L-S」と「月下美人AIR 63L-T」の2本のロッドを持ち込んだ田中さん。

「この2本のロッドは月下美人シリーズのなかでも強くてハリのあるライトアクションモデルです。ラインのテンションが抜けた状態からアワセを決めるためのセレクトです」と話す。

「そして3Dアジングを実現するためにはリールはハイギア一択です」と付け足して説明してくれた田中さん。

 ロッドのハリと併せて、瞬時のライン巻き取りも確実にアジの口に針を残すためには大切だという。

田中さんが提唱する3Dアジングを実現するタックルセレクト術とはいかに⁉


●タックル2本のスペック

デイアジングタックル

ロッド:月下美人AIR 53L-S:W/リール:24ルビアス2000S-H/ライン:月下美人TYPE-E(エステル)白0.3号/リーダー:月下美人フロロリーダー0.8号


ナイトアジングタックル

自重170gと軽量ながら、フルメタル(アルミ製)モノコックボディで高い剛性を実現。田中さんが提唱する3Dアジングには欠かすことのできないハイギア仕様で、ゼロテンションからのアワセも決まる。滑らかな巻き心地と高い感度も魅力。



3Dアジングとは

 では田中さんが実践している3Dアジングを具体的に紐解いていただこう。

「最初はショアジギングやシーバスなどの釣りで、フォール中に勝手に食っていた! という経験が始まりでした。私は、魚は人間が操作するリトリーブより、自然の流れや条件を活かしたフォールやリトリーブの方が確実に反応がいいと感じ、そのアタリを掛けられるように策を練りました。3Dアジングとはリトリーブ、ドリフト、フォールを釣り人が意図的に操作して、どの方向の動きにもアクションをつけ、アタリを出して積極的に掛けていく釣りスタイルです」と田中さんは水中を立体で捉えて攻略する3Dアジングについてそう話してくれた。

前後、左右、上下の動きを「リトリーブ」として捉えて攻略。



 リグを3Dに操り、水中を縦横無尽に攻略していくのだが、一般的にリトリーブするとリグは手前方向に動き、テンションフォールやフリーフォールでリグは下へと進み(落ち)、そこにアクションを加えることで、上への動きが加わる。そして潮や風を利用して横方向に流すドリフトがある。田中さんの考えは、これらをすべて「リトリーブ」として考えている。

 以下にそれぞれを具体的に解説していただこう。

前進のリトリーブ=リトリーブ

「アジングではリトリーブスピードが大切です。リールのギア比でもこの巻きスピードは変わります。このリトリーブのスピードですが、速くなりすぎるとアジは口を使ってくれません。一方、逆のパターンも存在し、遅すぎても口を使ってくれないときがあります。

 リトリーブは、アジングにおいて非常に大切なアクションとなります。要はそのシチュエーションにあったスピードでリトリーブが出来ているかが重要なのです」

左右のリトリーブ=ドリフト

「アジングで忘れてはいけないのが潮の動きです。潮が動いていないと魚の活性が上がらないのはもちろん、リトリーブのバリエーションに制約が生まれます。それは釣り人の力だけでは絶対にできない動き、それが左右方向のリトリーブです。どれだけこの自然を味方にできるかでも釣果は変わってくるので、この左右方向のリトリーブは必ず覚えておいてほしいポイントです。

 具体的には、流れの方向に合わせてロッドを送るように操作したり、横に流せる場合はベイルを返してラインを送り込み、できるだけ違和感なく自然に流すことを意識してみてください」

縦方向のリトリーブ=フォール

「アジングをしていてふと不思議に思ったことはないでしょうか? それはボトムにいるアジが1グラムだと釣れて、一気にボトムまで沈めようとして2グラムに変更すると、口を使ってこないことが結構あることです。考え方を変えると、1グラムのジグヘッドの縦のリトリーブスピードがちょうどよく、2グラムのジグヘッドのリトリーブスピードだと速すぎるから口を使わないと考えることができます。

 リールを巻いてくるリトリーブの釣りでは、巻きスピードに関しては意識しやすいポイントですが、手元の操作が少ないフォール時は、スピードに対し意外と意識が向かないポイントです。テンションフォールかフリーフォールでも縦のリトリーブスピードが変わってしまいますので注意が必要です」

3つのリトリーブを駆使してアジを狙え!



3Dアジングにおけるリグセレクト

 田中さんは、提唱する3Dアジングの3つのリトリーブを適正値にするためにジグヘッド&ワームをセレクトしている。

「私は個人的に1.5グラムまでを鉛製のジグヘッド、1.5グラム以上をタングステン製ジグヘッドにすることが多いです。どの方向でのリトリーブでも速すぎず、遅すぎない適切なスピード感を演出できるウエイトを釣り場のそのときの状況で使い分けます。

 一方、ワームのセレクト術は基本的に2.5インチクラスのワームをセンターに置いて釣りをしています。ワームのカラーは釣り場の水質によっても変えますが、常夜灯など光がある場合はクリア系からセレクトします。そして反応がなくなればソリッド系のカラーにローテーションしていきます。

 ナイトゲームで特に得意としている暗い場所では、ソリッドカラーから投入することが多くなります。それで反応がなければ、少し色の付いているクリア系のワームに変更して様子を見ていきます。ワームの素材は基本的にバチコンカスタムストロング(ダイワ)を使い、フグが多い場合や、産卵がらみで食い渋るタイミングなどはエラストマー素材(シラスビームなど)を使います」

使うウエイトに応じて鉛製とタングステンを使い分ける。写真左=鉛製の月下美人アジングジグヘッド、写真右=タングステン製のアジングジグヘッドTG(ともにダイワ)。

初場所攻略!

 これらのセッティングで初の愛媛アジングと対峙した田中さん。

 夕方から開始し夕マヅメまでは、ディープエリアでパターンを見つけようとするも撃沈。途中、ゲストフィッシュは顔を見せてはくれるものの本命のアジには出会えなかった。

 そして、田中さんが得意だと自負するナイトアジングへと突入するも、日が沈んだばかりのタイミングでもアジからの反応は得られないままだった。田中さんの顔色が少しずつ曇っていくのだが、そこは愛媛の豊富なアジのストック量と田中さんのアジャスト力がマッチし、状況が好転した。常夜灯下では尺クラスには届かなかったが、体高のあるまさに愛媛クオリティの上質なアジを連発。強烈な引き味を満喫し数釣りモードとなった。

 この入れ食いモードを維持したまま夜通し釣りまくった田中さん。そのままオールナイトで朝マヅメの一発でかアジ狙いをするも、ここでも不発。ここで力尽きた田中さん。一度仮眠をとり、仕切り直しで前日のデイアジングのリベンジに挑んだ。

 日中ではアジの群れをうまく発見。非常にテクニカルな状況で、賢いアジが相手だったが、ここでも3Dアジングが炸裂。連発モードとなり、猫に愛されながらの実釣ロケとなった。

得意のナイトアジングでは良型アジの連発モードとなった。


遠征の魅力

 今回の釣りを満喫した田中さんに、遠征の魅力について訪ねてみた。

「遠征の魅力は、今まで自分がホームエリアで実践してきた釣りが通用するかを試せる絶好の機会です。普段関西エリアでは『マヅメ』が機能し、大きなサイズを狙えるのですが、今回の愛媛エリアでは上手く型にハメることはできませんでした。それでもナイトアジングでは自分が提唱する3Dアジングでハメることができ、大満足な釣行となりました。

 やっぱり遠征は新しい釣り場でいままでの経験を試すことができるので、非常にワクワクしますよね。これからもこまめに地元以外の初場所で、切磋琢磨していきたいと思います」そう締めくくってくれた田中さん。彼の独自の理論が各地で猛威を振るうことは間違いないだろう。

日中は気難しいアジを相手にパターンを見つけキャッチ。港に居ついている猫にアジを奪われないようにと大変だった。


アジングを快適にしてくれる気になるアイテム

月下美人 フリーボードケース(ダイワ)

アジングロッドやメバリングといったライトゲームのジグヘッド収納に特化した薄型ケース。フックを刺せる取り替えボードが8枚付属し、釣り場に応じた配置が自由に変更可能。観音開きの両面収納で、ジクヘッド同士の干渉を防ぐパーテーションも付いている。ポケットにも収まりやすいコンパクトさも魅力。

【spec】
カラー:ブラック/外寸(cm):約17.5×10.5×2.2/価格(税抜):1700円

仕切りがついて整頓ができる。


profile

田中良樹(YOSHIKI TANAKA)

5歳の頃からヘラブナ釣りにハマり、ロックショア、ショアジギング、アジング、タチウオ、エギング、チニングなど、

関西を中心に幅広い釣りに精通。現在はアジング、チニング、エギングをメインに年間釣行日数は100日程度。YOSHIKIの愛称で親しまれ、関西エリアを中心にさまざまな魚を追い求めて自身も回遊する27歳。