モンスター キャッチの法則〜湯川流・でかアオリハンティング術〜


大型アオリイカ狙いが最盛期に突入! そしてでかイカ狙いの第一人者といえばこの人、湯川マサタカさん。その豊富な経験に裏付けされた、デイゲームでの最新でかアオリ攻略術について、とっておきの秘訣を訊いてみました!

春はモンスターが狙える最高のタイミングだ。



デイゲームのススメ

 ここ数年、ロケではデイゲームしかやらないのが私のスタイルです。なぜデイゲームなのか? その第一の理由は、やはりナイトの釣りと違って、視覚的な情報が多く得られることにあります。この「視覚から得られる情報が多い」ということのメリットは、エギングに限らず、釣りという分野においては、そこにターゲットを仕留めるための大切な要素がたくさん含まれているということです。

 では、どういったことが具体的に大切なのかについて話していくことにしましょう。

 まずいちばん大切なのは安全面。「足元が見やすい」「波やウネリが分かりやすい」などが現場でいち早く確認できれば、自分の立ち位置、キャストする場所も判断しやすく、安全かつ安心して釣りに集中できます。

 その次に潮の動き、ストラクチャー(シモリ、海藻、岩礁、サンゴ、カケアガリなど)の有無、潮目やベイトの有無、エギの着底、アタリの出方などが夜に比べて非常に認識しやすく、ストレスの少ない釣りが展開できるというメリットがあります。

 私の場合、こういった情報をスッと視覚から捉えることで、釣果が非常に出しやすくなっており、これがエギングの楽しさを倍増させてくれています。

 以上、デイゲームの魅力を簡単に説明しましたが、ではなぜ、そうした情報がいち早く得られることで釣果に結びつきやすくなるのか? ということを少し深掘りしていこうと思います。

まずはアングラー安全確保が大切。不安定な立ち位置では釣りに集中できずに釣果も散々になりかねない。



見えることでモチベーションが持続する!

 まず最初に、やはりエギングにおいても他の釣り同様、闇雲に投げているだけでは釣果は出にくいという事実があるため、先に例示した条件のなかの、「潮の動き」というところからお話ししていきましょう。

 一言に潮の動きといっても、分かりにくい人もたくさんいるでしょう。この潮の動きが明らかに速いものであるならば、エギを投げたときに潮上から潮下に流れるように進んでいくことでしょう。

 しかしながら、そこまで潮の流れが強くないことも多々ありますし、本流が流れていなくても、これによって潮のヨレやタマリが発生したりと、手には感じられない微妙な流れが発生することが多いのです。

 そんな手に感じない潮の動きをどう感知するのか? 例示したヨレや潮のタマリを目で見つけることができれば(そんな場所にはイカが着いていることが多いので)、いち早くエギを投入し、釣果に近づくことができるのです。

 目で海を確認し、「あそこにはいるかも?」というポイントを数多く見つけることができれば、エギを毎回投げるたびに、「このキャストは釣れるかも?」というドキドキにつながりますよね! 不慣れなナイトの釣りなどで、何も分からず、同じ方向にひたすら投げ続けるのはメンタル的にしんどいですが、その理由は、釣れそうな場所が見つけられず、釣れるかどうか分からないキャストを繰り返しているからです。

 ちなみに潮のヨレやタマリというのは、流れ藻や流木、表層に浮いている浮遊物が、ある一箇所に集まっていたり、もしくは一部分だけ水面が鏡状に落ち着いて見えたりするところを探すことで発見できます。こういうところを見つけたら、積極的に足を使って、どんどんそういったポイントに投げていくことで釣果につながりやすくなるのです。

デイは水面の状況がナイトゲームと違って非常にわかりやすい。ほんの少しの変化も気付け、モチベーションも維持できる。



浮遊物と水中観察

 次に、表面に浮いてる浮遊物が、突然一列に並び出したり、動き始めたりしたときは、潮に流れが出だしたという合図、つまり時合いになるので、辺りの浮遊物の動きは常に見ておかなければなりません。

 そして大切なのは、このとき必ず「潮上から潮下」に向かってエギを投げることが重要だということをおさえておきましょう。エギの頭が川でいうなら川上で、エギのお尻(カンナ=針がついたほう)が川下に向くように沈めていくことで、エギが自然に潮に馴染むので、イカがエギを食いやすくなるのです。

 流れが弱いときなどは、お話ししたように周囲の状況を判断しながら、一投一投を大切に行なうことで、毎投「このキャストは釣れるのでは」という期待を持てるため集中力も保てるし、結果的に確実な釣果に近づくことができるのです。

 そしてその次におさえておかなければならないのは、「イカがどういった場所に居着く可能性が高く、どんなところでエサを食べるのか?」ということです。そのヒントが、「水中のストラクチャーを観察する」ということにあります。

 どこに海藻が生えているのか? どこにシモリがあるのか? 水深は? カケアガリはどこか? などを目視できれば、当然その場所を攻めやすくなるため、無駄にエギを根掛かりさることもなくなります。同時に、ギリギリを攻めやすくなるというメリットができるので、これもまた確実な釣果に結びつく要素だと言えます。

 これらを踏まえて、視覚から得られる情報をフルに活用することで、デイゲームの楽しさが存分に味わえるのです。こんな具合に、デイゲームでは、安全かつ釣果に結びつくヒントがたくさん拾えます。そんな発想で、皆さんもぜひ、デイエギングを楽しんでみてください。

一瞬の変化が時に思わぬ大物を呼び寄せてくれる。このチャンスは絶対にモノにしたいところ。



狙い通りに仕留めたでかアオリ!

 今回の春イカ攻略は、主に産卵場絡みの捕食ポイントを狙いました。具体的には、藻場や投石(漁礁)があり、沖の水深があるところから、岸に向かってグッと浅くなっているワンド状のポイントです。

 親イカを狙うにはこの上ない条件のポイントですが、こういった条件が整った場所であっても、投げるエギの重さや方向が違えば、やはり釣果に辿り着くことは難しいものです。ここで大切なのは状況判断力と、経験に基づく引き出しをフルに活用できるかどうかという点です。

 今回はこのあと荒天になる予報だったため、釣りができるのは天気が崩れる前の早朝から昼前までという状況。潮のタイミング的には、午前が上げからの下げ絡みで悪くありません。低気圧前のベタナギだったのですが、気圧が下がり、荒れる前のベタナギ時は大型が食いやすいことは経験上わかっています。というわけで、釣り場に立つとモンスターの匂いがプンプン漂っていました。午前中半日の制限時間ですが、釣れそうな条件は整っています。

 釣り開始は午前5時過ぎ。さっそく朝イチ、3投目くらいにエギに重みが乗るアタリ!  食ったのは岸際の落ち込みにある藻場の上。深いところから浅いほうに探りを入れていたところ、落ち込み(ブレイク)の境目でのヒットでした。サイズはよさげでしたが、残念ながら掛けられず。横抱きだったようでバラしてしまいました。

 その後、沖の投石ポイントからくまなく探り、足元の落ち込み際にある藻場を引き続き丹念に探ります。この足元には飛び出した岩礁があるため攻めにくい(根掛かりの危険性の高い)場所なのですが、磯際からブレイクの落ち込みにかけては藻場があり、適度な水深かつ潮通しもそこそこいいので、間違いなくイカが寄りやすい場所です。

 ここでヒットさせるべく、ひたすらその場所を狙って、エギをカウントダウンしつつ、シャクり続けます。ラインテンションは張らず緩めずで、ノーマル3.5号のエギを、ナチュラルかつていねいにボトム付近中心に操作します。

 すると、でかイカ特有の、アタリがほぼ出ない状態からの「根掛かりか?」と思わせる感触がロッドに伝わります。やはりこのポイントを狙って正解でした。すかさずロッドを立てるとヒット! イカが走り終わるのを待ち、ゆっくり寄せてくると余裕の2キロ超えです。ネットですくったいかにも春イカらしいアオリイカは2490グラム。やり取りの感じから、2キロを超えているのは確実と思っていましたが、狙い通りの嬉しい釣果です。時間は午前7時30分でした。

ボトムで根掛かった?と感じる でかアオリ独特の抱きつきにしてやったり!



モンスターアオリのヒットシーンはこちら! ⇓



自己記録更新⁉

 その後しばらくは反応がなくなったため、底に見えているシモリ、沖で引っ掛かってくる藻場の周囲、岸際のテトラの落ち込み、投石(漁礁)周り、そして足元の落ち込みに繁茂する藻場と、いろんな場所をていねいに探るも、反応がないままの状態が続きます。

 ここで、沖にあった浮遊物が、風がないにもかかわらず、左から右に向かって流れ始めます。それまでは、エギを投入しても流れているのが感じられない程度だったのですが、経験上、潮の動き始めは好時合いなことが多いため、「このタイミングだ!」と思い、先程釣れた足元のカケアガリの同じコースをしつこく探ります。

 そうしているとやはり来た! またまた同じアタり方! ほぼラインに変化は出ない状態で、足元の底べったりでエギをしっかり抱いている感触が伝わります。竿を立てると一気に沖へ走りだし、1.5キロ設定のドラグがまったく止まらず出続けます。間違いなくでかい! 先程の2キロ超えとは比べものにならない強い走りで、足元で掛けたにも関わらず、かなり沖へ持っていかれたあげく、耐えている最中にまさかのフックアウト……横抱きだったのか? 掛かりが甘かったのか? 原因は分からないですが、過去に経験した4キロ以来のとんでもない引きだっただけに悔しさもひとしお。でも、大物の引きは存分に味わえました。

 その後、予報通りの急な大雨と爆風で強制終了となるも、久々にドキドキ感のあるゲームが楽しめたことに感謝。短くも充実のロケとなりましたが、こんな体験ができるのがこれからのシーズンです。でかイカ狙い、みなさんもぜひ!

自身、最大サイズをヒットするも、痛恨のスッポ抜け。これから春本格突入。まだまだ狙いにいきますよ!




でかイカ対応エギ解説

こんなタイプを用意しておこう

 必ず持っておきたいのは3.5号のノーマルとシャロー、3.5号ラトルのノーマルとシャローです。基本的にはノーマルを使用し、藻や底に掛かりやすいなら、エギを軽く(シャローにチェンジ)すればいいと思います。それで反応がなければラトルにしてみたり、フラッシュブーストを使用したり、ケイムラに変えてみたりというローテーションが基本です。まずはノーマルからスタート。エギの大きさや重さを、ポイントの水深と潮の流れにしっかりとアジャストさせ、それでダメだったら、音や視覚効果に訴えるものに変えていけばいいと思います。



セフィア クリンチフラッシュブースト(シマノ)

【DATA】サイズ:3.5号(19g)/カラー:全9色/価格(税別):1130円
ボディに内蔵した反射板がアクション時に揺れ、強烈な明滅を発生する。イカを遠くから寄せる効果があるほか、抱かせるパワーも秘める。




セフィア クリンチ エクスカウンター(シマノ)

【DATA】サイズ:3.8号(24g)/カラー:全8色/価格(税別):1400円
「でかイカ狙い」と「ボトムサーチ」がキーワード。横のダートを得意とし、ボトムレンジを確実に、かつ手前への移動距離を抑えつつじっくり探れる。モンスターを獲るための3.8号サイズだ。





使用タックル解説

ゆったり誘えるロングロッドを推奨!

 春イカ狙いで大切なのは、まず3.5号や4号クラスのエギをゆっくりシャクれる調子のロッドを使うこと。私の場合、ショートよりもロングロッドのほうが春イカに適したアクションを演出しやすいので、基本的に9フィート2インチの長めのタイプを使用することが多いです。しっかりゆっくりエギを操作できるのであれば、ショートロッドでも問題ないと思いますが、ショートピッチアクションよりも、ゆったりスローに誘えるアクションが演出しやすいものをおすすめします。

 リールはドラグ性能のいい2500番から3000番クラスであれば問題ないでしょう。ラインはPE0.6号から0.8号。藻場掛かりすることも多いので、リーダーは少し強めの3号を入れておくと安心感があると思います。

ここぞというポイントを絞り込み、釣れるイメージを膨らませることで、集中力を高めていくのが湯川流デイエギングだ。

〈ロッド〉SHIMANO セフィアエクスチューンS92ML+
〈リール〉SHIMANO 22ステラ2500S

ゆったりじっくり探るには9フィート前後の長めのロッドがおすすめという湯川さん。

ヒットエギはセフィアクリンチ フラッシュブースト3.5号





大型狙いのキモ

ロッド操作とエギの基本アクション

 基本的には大きくゆっくりした誘いで、エギをスローフォールさせ、ボトムステイの時間を長くとる……これがベースとなりますが、速い動きもときには必要です。8割はスローを意識し、2割は速いテンポを意識するといった具合に、アクションを使い分ける感覚で良いと考えています。そして、アタリは無理に取ろうとしないで、ラインテンションを張りすぎず、ナチュラルなフォールを心掛けることこそが、でかイカへ近づく第一歩だと思います。スラックジャークのように、できるだけエギを手前に寄せずに移動距離を抑えながら誘い続けることで、警戒心の高いイカにもスイッチが入りやすいのです。

シャクリはゆったりが基本

①ゆったり大きくシャクる。

②誘いのあとはフォールさせてボトムステイ。

スラックジャークが有効
ラインを弛ませて鋭く数回シャクるスラックジャークは、エギの移動距離をおさえ定点で誘える。スレイカに効果的な方法だ。





取り込みの注意点

「焦らずゆっくり」が成功の秘訣

 思わぬビッグサイズが掛かったり、初めて釣れたでかイカなどは、寄せてはきたものの、バラすことも多々あります。というのは、やはり大物が見えると興奮してしまい、気が焦るからです。まずは掛かり所を確認し、少しドラグを緩めてから、落ち着いてやり取りするこ

とです。カンナに掛かっていさえすれば、ラインテンションを緩めすぎたり、逆に張りすぎたりしなければ、まず外れることはないので、あとは落ち着いてタモ入れをすること。寄せてからの噴射が激しいことが多いので、そのタイミングでも焦らずに、イカが疲れて大人しくなるまで待つつもりで、ゆっくりやり取りしましょう!



ランディングの手順

①仲間がいれば呼んで協力してもらおう。

②イカを岸際に寄せる。

③エンペラ側からネットに入れる。

④そのままゆっくり頭、足もネットへ。

⑤取り込み完了。スミの噴射にはご注意を!





こんなポイントを狙え!

5月下旬〜梅雨明けの狙い場

 親イカ攻略では藻場が狙い目というのは常識ですが、これも産卵初期はホンダワラがメインのポイント、後期はアマモがあるポイントという具合に変わっていきます。そして夏場に近くなればなるほど水温が上がってくるので、そんな場合は河口に近い場所を狙うと効果的です。また、この時期は、実は浅い場所で手返し良く数釣りを楽しめるタイミングでもあります。ちなみにシャローで釣れる条件というのは、沖にガッツリカケ下がったディープがあり、岬絡みのワンドになっているような場所がそれ。

 ともあれ、まずは釣りをする前に、「藻場がどこにあるのか?」をしっかりと探しておく

ことが必要となります。

シャローの藻場、隣接するディープ、潮通しのいい岬から続くワンド。この好条件が重なるような場所を多くストックしておくことが重要だ。


2.5キロのナイスモンスターをキャッチ。








Profile

湯川マサタカ(ゆかわ・まさたか)

「ショア侍JOE」。長年にわたり南紀の陸っぱりを探り歩いてきた彼を人はそう呼ぶ。シマノインストラクター兼カリスマ美容師。エギングガイドサービスも大人気。詳しくは「ジョースタイルランガンアドベンチャー」で検索!