サーフでもなく、磯や漁港、堤防でもないショアジギングのフロンティア、それがゴロタサーフ。少々足場は悪いが実は小魚などのベイトフィッシュが豊富な環境であり、「穴場」である。ゴロタ周りの食物連鎖の頂点にある回遊魚や根魚を狙って、駿河湾に面した伊豆半島を新保明弘さんと訪れた。
ロングキャストで狙え!
ベストシーズンとベストなタイミング
駿河湾沿岸、伊豆半島沿岸は黒潮の流れを汲む海流のおかげで青物の回遊が多く、ショアジギングのポイントも豊富だ。年間を通してショアジギングは楽しめるが、やはりハイシーズンがあり、大体5月下旬から11月いっぱいまでである。ワカシ、イナダ、ワラサ、ショゴ(50センチクラスまでのカンパチ)、シイラ、ソウダガツオ、スマガツオ、ゴマサバなどが狙いとなる。
5月下旬から6月のシーズン当初は年により多少スタートの前後があるものの、昨今ではメータークラスのシイラやワラサといった比較的大型の青物の回遊から始まり、7月に入るとワカシやイナダ、ショゴ、ペンペンシイラなどの数釣りが楽しめるようになり、8月からソウダガツオ、スマガツオといったカツオ類の回遊が始まる。
シーズン当初の大型はやはりコンスタントに回遊が見られることはなく、いかにタイミングよく釣行できるかに尽きるが、シイラはやはり「魚へんに暑い」と書くほどに、夏日を思わせる晴天の日に回遊が多い。また、マヅメ時に限らず日中でも回遊が見られる。対してワラサ、イナダは悪天候後のある程度濁りの入ったタイミングに回遊が多くみられる傾向にある。それらのタイミングにうまく当たったアングラーはいい魚と出会えている。
しかし、天候ばかりは釣行日近くにならないとつかめないため、釣行計画をする際は出来る限り有望な時間帯と潮回りを選びたい。皆さん知っての通り、マヅメ時は外せないが青物は朝マヅメの方がいい傾向が強い。なぜならば夕マヅメは昼間にエサを食べることが出来ればそこまで活発に捕食しなくても済むからだ。潮回りは出来るだけ上げ潮から下げ、下げ潮から上げといった変化するタイミングを狙う。それがマヅメ時など他の好機と重なるよう釣行日を選択したい。そして、上げ潮と下げ潮であれば断然上げ潮にチャンスがある。状況によっては流れが強すぎて狙えないということもあるが、潮位の差が大きい中潮、大潮がいい傾向にある。
昨今、人気の釣りだけに足場のいい実績のある堤防周りはかなり入ることが難しいため、多くのアングラーが入れるキャパが大きいゴロタサーフはオススメである。
LSJのターゲットは主に青物が中心となる。
ゴロタサーフが釣れるいくつかの理由
伊豆半島沿岸にはゴロタ浜(以降ゴロタサーフ)が多い。なぜならば伊豆半島は潮の当たりがよく、海岸線の岩盤が崩れそれを波と潮の流れが丸く削ってくれるためである。ゴロタサーフは打ち付ける波によって水中に酸素を取り込み、流れ着いた流木や海藻を同様にして砕き微生物が分解しやすいようにしてくれる働きがある。当然、ゴロタとゴロタの間に多くの隙間があるため、さまざまな生物がすみやすい環境となっている。微生物、プランクトンが多ければ、イワシの仲間などのベイトフィッシュの回遊も見られるため、青物も回ってきやすい。地磯や漁港などにショアジギングアングラーの目が集中し、盲点になりやすいためオススメなポイントと言える。
しかし、どんなゴロタサーフでもいいわけではない。見た目ですぐに遠浅となっている場合や、ワンド状態になっていてその中に沖まで広く海藻が繁茂しているようなゴロタサーフは青物の回遊する潮が入り込んでいないことが多い。ワンド状になっていても海藻が生えているのが岸辺で干潮満潮の影響を受ける潮間帯に限っているならば沖に回遊魚の回遊する可能性は高い。そしてそのようなところは沖から青物がベイトを追い込みやすい地形となっている。時に波打ち際で激しいボイルに遭遇することもある。
後は急に深くなるカケアガリが隣接する、岬状態になっている、形成するゴロタが大きいゴロタサーフは潮の流れがいいことが多いためポイントとなりやすい。
そして、ゴロタサーフで釣りをする際の注意点であるが、足場が丸いゴロタ石で形成されているため、転倒しやすい。必ず一歩一歩安定したゴロタに足を掛けるように歩く。スパイクブーツは必ず着用し、濡れているゴロタには飛び乗ったりしない。明らかに苔や海藻が生えているものには乗らない。転倒してしまった場合に体に対する衝撃を和らげるために膨張式ではなく、浮力素材の入った固定式のフローティングベストを着用していいただきたい。
ゴロタは丸石が多く滑りやすい。細心の注意を払って挑もう。
プラグとメタルでオールレンジ攻略
それではゴロタサーフの攻略であるが、青物の回遊しやすいゴロタサーフはメタルジグとプラグを使ってレンジをどう攻略するかにある。万能なのはメタルジグである。水面直下からボトムまでをレンジを取って狙いやすい。対して、プラグは表層で勝負するルアーとなる。
水面に青物のボイルがある。イワシなどのベイトフィッシュの反応が見える場合、まずは表層狙い。メタルジグは基本中の基本、ロングキャストをして着水したら素早く糸フケを取って水面直下をアクションさせる。アクションの基本は、ワンピッチジャーク、ジャカジャカ巻きである。それですぐに表層の青物のバイトが得られなければ、その下に回遊している青物を狙う。水深にもよるが、着水からカウントダウンさせて15秒位までの間を重点的に攻める。それでも反応が得られない場合は、最初のフォールで着底させ、そのまま手前まで攻めるようにしたい。このときに注意しなければいけないのはメタルジグが着底したら出来る限り早くアクションに移ること。青物はフォールするメタルジグを追尾してきて動きが変わる瞬間にバイトしてくることが多い。着底でモタモタしていると青物もメタルジグを見失い離れていく。また、根掛かりも多くなってしまう。
そしてプラグであるが、表層に青物のボイルがあるときはもちろんのこと、水深があるポイントでもアクションや下からのシルエットや音で深場から青物を誘い出してバイトさせる。今回はペンシルベイトを紹介するが音でアピールするならばポッパーも有効である。キャストしたらなるべくドボンと音を立てて着水させる。その音で青物を上に向かせる。そしたらロッドを水面と平行にスライドさせながらアクションを加える。アクションとアクションの間にポーズを入れることも時に有効である。メタルジグよりも軽い力でアクションを入れられるため、メタルジグの釣りと交互に行うことで体力の消耗を抑えることが出来る。
水面にボイルがあるのにどうしても反応がない。また、ベイトが居るのに青物の気配がないときにはテールスピンジグもオススメ。水面にボイルがあるのに反応しないときは小型のベイトに限って捕食している場合いが多く、そんなときはブレードの細かな回転に好反応を示すことがある。そして、ベイトが居るのに青物の気配がないとき、ゴロタサーフではその下に活性の高い根魚が居ることが多い。ボトムを取ってからそのままリトリーブしてくるだけでバイトが得られることが多い。釣り場での集中力を保つのにもオススメである。
リズミカルなアクションで誘っていこう。
急深地形の攻略法
急なカケアガリが隣接するゴロタサーフではいかに手前のカケアガリをかわすかも重要となってくる。キャストしたら必ずフォールはフリーフォールで落とす。そうすることによって浮力のあるPEラインはカケアガリをかわすようにカーブを描くように沈むため、そこから巻き上げ、アクションさせることでカケアガリを避けてルアーを通すことが出来る。
沈める深さはカウントダウンを意識して行う。カケアガリのキツさにもよるが、引いてくる途中で底をとってしまうとそこまで引いてくる段階でラインが直線に近くなっており、カケアガリにラインが触れやすく注意が必要である。
ライトタックルで魚とのファイトが心配になるが、強いタックル、太めのライン、強いドラグでは力強く張ったラインがカケアガリに触れると、張った糸をハサミで切りやすいように、かえってブレイクしやすいこともある。ライトタックルである程度魚を泳がせることで対象魚は横に動きやすくなるため、落ちついてファイトすれば意外とキャッチしやすい。
転倒の際の衝撃を和らげる意味でも膨張式ではなく浮力体入りを推奨する。ルアーなどの小物を入れることもできるので、不安定なゴロタ歩きとの相性もいい。
シマノのライフジャケットはダイヤルひとつで調整できる優れもの。
シューズはフェルトスパイク付きが最も滑らないためゴロタサーフにオススメ。
ゴロタサーフの優位性と攻略のコツ
伊豆半島、特に駿河湾に面した西伊豆のゴロタサーフは急深な地形になっていることが多い。また、急深な場所の方が釣りの面でも有利だ。キャストしたら必ずフリーフォールでボトムまでルアーを送り込んでいく。テンションをかけてラインが張れば張るほど手前のブレイクにラインをとられやすくなってしまう。
岩と岩の隙間にはさまざまな生き物が暮らす。酸素量も多く、小魚も豊富だ。写真の鮮やかな色の魚はスズメダイの一種。
駿河湾〜西伊豆ゴロタサーフで狙えるターゲット
西伊豆では主に5月から11月にかけて、シイラ、カンパチ(ショゴ)、ワカシ、イナダ、ワラサ、ソウダガツオ、スマガツオ、ゴマサバなど。後は、アカハタ、オオモンハタなどハタの仲間である。
ベイトは主にイワシの仲間であるが、カンパチやイナダ、ワラサはタカベもベイトとなる。タカベは7月~11月頃まで西伊豆ではよく見かけるターゲットである。そしてシイラに関してはトビウオも大好物であるため、トビウオが跳ねるのが確認できれば期待は大きい。メタルジグのアクションは、ワンピッチジャーク、よく言われるジャカジャカ巻きがアングラーの負担が少なくかつ効果的である。
ペンシルベイトについてはドックウォーク、首振りアクション。ロッドを横にやさしく煽りながらルアーをアクションさせるスライドアクションがオススメ。
〈ロッド〉コルトスナイパーSS S96M(シマノ)
〈リール〉ミラベルC5000XG(シマノ)
〈ライン〉ピットブル8+ 1.2号(シマノ)
〈リーダー〉フロロカーボン 6号
コルトスナイパーアオモノキャッチャーハイアピール(シマノ)
軽比重合金製のメタルジグ。鉛りよりも比重が軽いため、同じ重さの鉛のメタルジグもシルエットが大きくなる。フォールでのヒラヒラアクションやジャカジャカ巻きでのフラッシングによるアピール力が増している。また、鉛よりも硬い金属であるため、ゴロタにぶつかった際の変形も抑えられる。付属のフックも強固で刺さりがよくそのまま使える。
コルトスナイパーロックウォーク110F(シマノ)
コルトスナイパーシリーズでも小型、11センチのフローテイングペンシル。しかし、スケールブースト搭載で飛距離は申し分なし。2号、3号といった太めのPEでも使える。フローティングのため、安定した首振りアクションとスライドアクションでメタル系ルアーに反応しない青物を表層に誘い出す。今回使用しているコルトスナイパーLSJシリーズにはジャストサイズと言える。
遠投が釣果アップのコツ
トラブル少なく遠投する方法は、まずリーダーの結束部をトップガイドに巻き込まないことである。リーダーの長さは、自分の身長の5割から7割程度の長さがいい。自分の両手を広げた長さの半分もしくはそれよりも少し長め位で覚えておくといい。タラシを長めにキャストするので後ろにゆっくりとルアーを回して一度止めて安定させてからキャストする。
次にルアーの飛んでいく方向、ラインの出ていく方向に合わせてロッドの角度を合わせていく。
リーダーとの結束部はティップガイドの外。
ロッドを振り抜いてキャスト。
青物の気配があまりにもないときは無理にルアーをキャストし続けるよりもロックフィッシュ狙いにシフトする。バイトが多く、モチベーション維持に有効。この日も良型のオオモンハタがヒット。
周囲の釣れている状況をチェックしやすいのもゴロタサーフのいいところ。隣のアングラーが何かを掛けていた!
Profile
新保明弘(しんぽ・あきひろ)
長年、雑誌やTVなどのメディアで活躍するシマノインストラクター。地元・駿河湾をメインに青物、尺メバル、ときには渓流などさまざまな釣りを楽しむマルチアングラー。
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