今年も春イカシーズンがやってまいりました。大物特有の引きをぜひ体験していただきたい時期ですが、それでは具体的にどんなポイントを選べばいいのでしょうか? さっそく、でかイカを追い求めて幾年月、広川嘉孝さんにアドバイスしてもらいましょう!
春イカの行動様式
さあ、エギンガーにとって待ちに待った春イカシーズンの到来です。自然界の生き物というのはとても不思議なものです。人間みたく脳で考えて行動するよりも、地球の状態、自然の摂理や環境のなかで本能的に行動します。きっとアオリイカ自身、いま水温が何度で、そろそろ接岸の準備をしよう……なんて考えもしていないはずです。
そういった感覚が鈍っている我々人類は、数値化された水温、データ化された黒潮の接岸具合を頼りに行動するしかありません。野生的な人は、そういった情報には頼らずに己の嗅覚を頼りに海辺へ立ったりもするわけですが、もちろん今までの勘を頼りに行動するスタイルも素敵だと思います。たとえ衛星等の海水面温度が低かったとしても、現場では親イカ達がワラワラと湧いて、俺のエギを待っているんじゃないのか! 的な思考回路こそ、釣り人として立派な姿かと思います(笑)。
さて、黒潮からの暖流がいったん差してくれば、それに乗って春イカ達はすでに接岸している可能性が高いでしょう。目安となる水温は16~17℃あたりでしょうか。釣行時に少し水温が下がったとしても、磯際やボトムにへばりついて機を伺っているかもしれません。
水温18℃あたりで安定するベストタイミングは、例年4月以降です。いてもたっても居られないアングラーの皆様が、肌で感じる気温、あるいは過去に釣れた日付から判断し、釣り場に出向くという行動は、釣り人として一番カッコイイと思います。ベストタイミングには、当然ライバル達も多くなります。「まだ早いかな?」というくらいのタイミングのほうが、シーズン先取りのオイシイ思いができたりするものです。
もちろん、春イカファーストラン的な大規模な群れで押し寄せてくるのは、狭い範囲の水温上昇ではなく、じわじわと安定度の増した広範囲な水温の壁が接岸するときです。慌てずにじっくりと腰を据えて勝機を伺うなら、上り潮、下り潮共に18℃を連日キープしている状況で出かけましょう。
ただ、そのタイミングがいつなのかを読むのは、毎年悩みのタネです。とはいえ大規模なファーストランは、例えば黒潮分流である対馬海流の影響を受ける日本海側では、水温差が明確なので、そのXデーが解りやすいというパターンもあります。また、沖合の定置網に入った情報がキャッチできるなら、その翌日や2日後あたりに春爆が訪れます。そういった独自の情報網を構築しておくことも、春イカゲームの勝率を上げる術として重要です。
春はここを狙え!
藻場
親イカ狙いの定番スポットが藻場。ここには春イカ狙いの醍醐味が詰まっています。産卵を意識した親イカ以外に、産卵を意識していない個体も、ストラクチャーである藻場に集まります。ペアリングした親イカは、産卵に集中しているため、エギを抱かせるのが非常に困難なターゲットとなります。その前段階として、相手探しの個体はまだ捕食行動をするので、狙いやすくなります。また、産卵とは無関係な個体は、藻場周辺のさまざまな場所をウロウロしたり、潮通しのいい場所へベイト探しに出掛けるなど、広範囲に動きます。
浅い藻場は春イカ狙いの代表的な釣り場。シャローエギで攻略しよう。
ワンド
藻場とリンクする地形で、春は絶対に見逃せない一級ポイント。ワンドの奥に入ってしまっている個体よりも、ワンドの出入り口周辺をウロウロしている個体を狙うと比較的釣りやすいかと思います。そういった場所に多く見受けられるのが、磯場の切れ目であったり、藻場の切れ目であったりします。そういうエッジを狙うとエギの操作もしやすく、釣れる確率は上がります。潮通しのいい場所に隣接するワンドは、間違いなく一級ポイントとなります。
潮通しのいいワンドは絶好の狙い目。イケスのある場所はその条件を満たす。
岬
岬周辺は潮通しがよく、春イカ達の回遊コースとなります。この岬という地形は、多くの春イカが通る絶好のポイントであり、これから産卵に入る個体も、捕食で徘徊する個体も、すべての個体を視野に入れて粘っていい場所であります。言い換えれば、マヅメ時にも釣れる確率が非常に高いポイントであり、時間や光量にとらわれずに一日中釣れる可能性の高いポイントといえます。期待値が高いだけに、キープキャストを前提とする粘りと辛抱が必要となります。
ちょっと険しいが、こんな岬はライバルも少ないので超有望。安全対策を万全にしてチャレンジしたい。
ナイトゲームの常夜灯周り
ナイトゲームポイントといえば常夜灯周りなのですが、明かりが効いている場所は、ふらっと潮に乗って現れる見えイカや、やる気のない個体がゆっくり泳いでたりする場面が多く見受けられます。狙い目なのは明暗部の暗い側。ここに捕食者は潜んでいます。春時期の成長した個体の場合、なおさらその傾向を強く感じます。ただし水深があるポイントでは、明かりが効いているところでも、そのボトム周辺や、防波堤の際に潜んでいる可能性は高いものです。
水深がある常夜灯下では、足元まできっちり探ること!
これから水温が上がりそうな場所
適水温になる前の、まだ水温の低い場所で待ち構えるのは隠された必殺技です。いまはまだアオリイカの適水温以下ですが、もうあと何日かで上がりそう! そういった場所で、タイミングを見計らってシャクり続けるのです。「今日接岸が始まるかもしれない!」「きっと例年通りのタイミングで接岸してくるに違いない!」そんな希望を胸に掲げれば、春爆を夢見てがんばれるのです!
「適水温までもう一歩!」というポイントで粘るのも春爆のための一手段なのだ。
夜の磯
一発大物が狙えたり、良型の数釣りができる場所は? ファイナルアンサーは、やはり夜の磯だと思います。もちろん月周りが大いに影響するポイントなのは間違いなく、やはり月夜周りに圧倒的に好釣果が上がります。「満月大潮の干潮前後!」このキーワードは、親イカ狙いのエギンガーには最高に甘美なる響きなワケです。もちろん新月周りでも、余計なプレッシャーが少ない磯場の場合、マヅメ時によく釣れるポイントなのは間違いありません。ただし、闇磯となると、アングラーの精神力が持たないケースが多いです。「こんな漆黒ではイカがエギを見つけられるわけがない!」と思ってしまうのです(笑)。しかしながら、闇磯にだって大物ゲットの夢があるのは間違いありません!
夜の磯は危険がいっぱい。万全の安全対策で臨みたい。
こんなエギがあれば万全!
エギの種類は3号、3.5号があれば基本的にはオールシーズン楽しめます。4号は春に使いたくなる状況は多々ありますが、強いて言えば特になくても問題はありません。そして飛距離の出るタイプがあれば言うことなしです。ともあれ、エギサイズで悩んだ時は、3.5号をメインに据えます。このとき、シャロータイプとディープタイプを両方持ち合わせておけば、あらゆる場面で攻略の幅が広がり、結果へと繋がる可能性も高くなります。カラーについてはアピール系とナチュラル系、そして暗めのカラーの3種類があれば万全です。
ロケッティアアキュレイド3.5号(バレーヒルソルト)があれば春イカも相手にできる。遠投性能も魅力的だ。
こんなタックルがあれば万全!
オールシーズン1本で対応できるようなスペックのロッドは各社からリリースされているので、気に入った1本を選び、そのロッドを身体の一部のように思うがままに扱えるようになるのが理想です。あまり強すぎるよりは、「少し弱めかな……」というくらいのアクション(ミディアムライトくらい)をチョイスすることをオススメします。リールは年間通して2500 番あたりの大きさで、PEラインは0.8号で周年まかなえます。かといって、ずっと同じラインをそのまま使うのではなく、リーダーの結び替えはもちろん、PE の古い箇所を切り捨てたり、使用頻度にもよりますが定期的なライン交換は必須です。
「ML」という表記があるエギングロッドが適度に柔らかくて扱いやすい。お気に入りの1本を使い続けることで、わずかなアタリがだんだん取れるようになってくる。
Profile
広川嘉孝
(ひろかわ・よしたか)
人呼んで「イカ係長」。エギングブーム以前からアオリイカを追い続ける。オーソドックスなスタイルながら、確実に釣果を引きずり出す状況判断力は特筆モノ。兵庫県在住。
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