「こんなにカッコいい魚が東京湾にはいっぱいいますから。最高ですよ」。日々、クロダイやキビレを追い求めるO.S.Pソルトプロスタッフ、龍岩朋樹さんは釣り上げたキビレを眺めてしみじみとつぶやいた。フリーリグでボトムをズル引く。至ってシンプルな基本のリグとアクションで、クロダイ、そしてキビレ、2種のチヌの仲間の金属的なアタリとパワフルな引きを楽しむことができるチニングの魅力に迫る。
極論、東京湾内ならチヌはどこにでもいる
全国的に数が増えているとされているクロダイやキビレなどチヌの仲間。特に東京湾では元々数が多かったのが、さらに増えている。川や運河を覗き込むと、意外なほど身近な存在であることを目の当たりにする機会が増えた。
引きが強く、さらに銀色に光る精悍な魚体はこれまで多くの釣り人を魅了してきた。従来は落とし込み釣りやウキ釣りなどエサ釣りが主流だったが、最近ではルアーで釣る「チニング」がブームとなっている。
しかし、どこにでもいるからと言って、どこでもルアーで釣れるわけではない。チニングで釣りやすい条件はいくつかある。特にボトムを中心に探るフリーリグチニングでは「水深3メートル未満」がひとつの基準だと龍岩さんは語る。
「私の場合は水深3メートル未満のシャローで探しています。基本的には砂地メインに牡蠣瀬や貝殻があったり、ゴロタ周りです」
水深が深すぎると、ボトムより護岸など縦のストラクチャーに着いてしまい、フリーリグはじめルアーでの釣りは成立しづらい。
今回選択したのは千葉県の中規模河川の河口。潮の干満の影響を受ける感潮域で午後から釣りをスタートした。
汽水域を形成する大小の河川の河口では、甲殻類や貝類などのエサが豊富であることを背景に、チニングが成立しやすい。ボラが群れていたり、ボトムには牡蠣がたくさん生えていたり、どこにでもある風景だ。ちょうど干潮の潮止まりで、しかも正午過ぎの日中。上げ潮、そして夕マヅメにかけてが勝負と想定していたのだが、早い段階から予想外にフッキングに至らないバイトが連発した。
「あ〜、掛からない。やっぱり潮止まりの(ネガティブな)パワーかな。上げ2〜3分には本気食いしてくる魚が増えると思います」
とはいえ、確実にチヌとコンタクトできているのは水深が浅く、対岸寄りのブレイクまで余裕でキャストできる規模の中規模河川ならではだ。
「よっしゃ、食った!クロダイかな。さっき掛け損なっていたのも多分クロダイですね」
ワームはドライブホッグSWのタフコンシュリンプだった。
「まずはクロダイ1尾目。次はキビレだとうれしいですね」
幸先よく1尾目のキャッチに成功。
スタンダードカラーに期待の新色が追加!
より確実に、多くの魚とルアーをコンタクトさせるために、3メートル未満のシャロー、中規模河川という選択をした龍岩さん。
次に気になるのがワームのカラー選択だ。おおむねチヌのエサになりそうな生き物やボトムの色合いに合わせていけばOKだが、カラーで大きな差が出ることもあるのがチニングだ。
龍岩さんは大まかに4系統のカラーを使い分けていた。まず、「スタンダードカラー」として位置づけるのが、今回の取材で早々に1尾をキャッチしたタフコンシュリンプである。
「ナチュラルかつスタンダードなカラーです。まずはこのカラーからスタートするのが基本です」
次にナチュラルかつシルエットをハッキリ出せるカラーとして4色を挙げる。
「グリパン、グリパンゴールド、ハゼJAPAN、牡蠣瀬クロー。ナチュラル気味でありつつ、シルエットがハッキリ出るので、濁りが強いときなどにラメの有無、茶色系がいいのか、灰色、緑がいいのか、投げて反応を見比べてみたりしています」
3つ目がエビミソ。
「朝夕マヅメの光量が少ないとき、夏場の赤茶色の濁りなどに有効です」
最後はナイトゲームのスタンダードカラー。
「ソリッドレッドとライムチャート。主にナイトゲーム用という位置づけですが、ライムチャートは夏場の強い濁りにも対応できるカラーです」
これら4系統で考えていくが、スタンダードカラーとして2色が追加リリースされる。
「透け感があるナチュラルカラーは現状タフコンシュリンプのみですが、より幅広い状況に対応するために2色が追加となります。ウォーターメロン・ゴールドブラックは私が監修しました。湾奥パンプキンシュリンプは茶色い透け感のあるカラーです。それぞれタフコンシュリンプが水色にあっていないと感じるときに使用します」
リグを工夫し、そしてワームのカラーをローテする。これがチニングゲームではマストな作法となる。
同じリグと釣り方でクロダイとキビレを狙える
干潮のどうみても期待薄そうな時間帯のアタリを掛け、首尾よく2尾のクロダイをキャッチした龍岩さん。しかし、それ以降潮が動き始めるまでしばらくはアタリが遠のいた。
「次はキビレを釣りたいんですけどね。キビレの方が潮が動くタイミングによく食ってきます。ベストな潮位と夕マヅメがかぶれば最高なんですけどね」
迎えた夕マヅメ、午後5時を回った頃のことだった。
「よし、きた!ようやく食いましたね。クロダイかと思ったら、キビレですね」
尾ビレと尻ビレの縁が鮮やかなイエローに染まったでかキビレ、45センチだった。
「チヌは全国的に増えてきていて、東京湾でも釣りやすく、かなり身近なターゲットです。カッコいい魚体に金属的なアタリ、そして強い引きを味わえるのがチニングです。ぜひ楽しんでみてください」
チヌのバイトは一度体験したら病みつき間違いなし。ぜひ挑戦してみてほしい。
狙いどおりのキビレのキャッチに思わず口元もほころぶ。
釣りやすいのは中規模河川
流芯はもちろん、対岸寄りのブレイクも余裕で射程圏内に収められる規模の河川。「まずは護岸から垂直にキャストして、対岸のブレイク、流芯、手前のブレイクと広く探ります」。フリーリグをズル引きやポーズをまじえたズル止めをしていると、手前のブレイクで掛からないバイトが数回あった。
「次は斜めにキャストして、手前のブレイクでルアーを長く見せられるようにします」。こうすることで、釣りの効率と攻略の精度を高めることができるのだ。
川幅が広すぎると流芯まで届かなかったり、逆に狭すぎるとスレていて口を使わせるのが難しい。「フルキャストで対岸までギリギリ届かない」くらいの規模がルアーで食わせやすい。
流心の両脇にあるブレイクは有望ヒットポイントとなる。
最初は対岸に向けてフルキャストして、ブレイク、流芯、ブレイクと広く探る。
次にアタリがあった場所を集中して探る。この日は手前のブレイクにアタリが集中した。
アクションはズル引きと「ズル止め」
広く探るならリーリングでズル引き。大規模河川では主流となるアクション。中規模河川ではまずアタリがある場所を探していく場合に多用する。
この日、龍岩さんが多用していたのは「ズル止め」。リーリングではなく、ロッドワークでズル引いて、ラインを巻き取り、少し止める。フッキングの動作に移行しやすいため、止めているときにアタリが出るのが理想的だという。
牡蠣瀬周りを攻めるボトムチニングはリーダーに傷が入りやすい。スタックしたり、1尾釣ったりしたらフックポイントと合わせて必ずチェックしよう。
チニングオススメプラグ
■メタルバイブ
オーバーライド 1/2オンス
夜はゆっくりタダ巻きかタダ巻き&ステイ。日中は速めのタダ巻き、タダ巻き&ステイ、トゥイッチ&ステイ。
ワームはカラーローテが大切!
■スタンダードカラー
タフコンシュリンプ
特殊な状況を除いて基準となるスタンダードカラー。
ウォーターメロン・ゴールドブラック
緑がかった水色に合わせたいときに使用する。龍岩さん監修カラー。
湾奥パンプキンシュリンプ
茶色系の透け感のあるカラー。横山空知さん監修カラー。
■光量が弱いとき
エビミソ
朝夕マヅメ、夏の赤茶色の濁りに有効。
■ナイトのスタンダード
(上から)
ライムチャートSW:デイでの濁りとナイト。真夏のどちゃ濁りにも効く。
ソリッドレッド:龍岩さんはナイトは大体ソリッドレッド。
■濁り潮などでシルエットを出したいとき
(上から)
グリーンパンプキンペッパー:ラメなしでボトムの色に合わせる。
グリパンゴールド:色がついた水でもアピールするラメあり。
ハゼJAPAN:テナガエビにマッチ・ザ・ベイト!
牡蠣瀬クロー:緑で濁りが濃いときにシルエットを出せる。
ホッグは「ズル止め」クローはピンポイント
その日の反応を見ながら。ピンポイント狙いはクロー、魚が小さい時はクローの2インチ。ホッグはズル引き&止めがいい。これは「止めたときにフラスカートがふわっとなるから」だという。冬はボリュームがある方がいいためホッグ一択。活性が高くて遠くからでもガンガン寄ってくるなら食わせ重視でクロー。
ドライブクローSW2インチ
カラーは上から、タフコンシュリンプ、テッパンシュリンプ、グリパンチャート、根魚レッド。
警戒心が強いチヌに対するアプローチ
今回訪れた中規模河川の河口は足元にも時々クロダイの魚影が確認できた。龍岩さんは遠投して対岸のブレイクや流芯を狙うときはそれほど気にしていなかったが、手前のブレイクや足元付近を狙うときは護岸際からロッド1本分程度下がって釣りをしていた。
チヌは非常に警戒心の強い魚だ。とくに人影などはプレッシャーへと直結するので、一歩下がるなど水面に写り込まないようにしよう。
巻きの安定感ならベイト、飛距離重視ならスピニング
龍岩さんは基本的にはベイトタックルを使用している。スピニングの出番は遠投が必要なときだ。「ボートチニングをやっているとスピニングのド遠投でしか食ってこないなど、ハッキリと差が出ることがあります」と語る。それだけクロダイの仲間の警戒心は高く、人間の気配を察知すると途端に食わなくなってしまう。十分な距離感を保ったアプローチは不可欠だ。
■ベイトタックル
〈ロッド〉シマノ ブレニアスエクスチューンS76M
〈リール〉シマノ ヴァンキッシュC3000MHG
〈ライン〉シマノ ピットブル8+0.8号
〈リーダー〉フロロ16ポンド
潮が動くときが有望
ド干潮で対岸の一部が日上がった川を前に「止まっているよりは動いている方がいい」と龍岩さん。取材時は止まっているタイミングに2尾釣れたが、いずれも居着きのクロダイ。キビレは上げ潮が効いてきてから釣れた。ただ、潮は動きすぎてもダメなので、大潮や中潮など緩慢差が激しく潮が速い日は潮の動き始めなどたるんだときにバイトが集中する傾向だ。
Profile
龍岩朋樹(たついわ・ともき)
O.S.Pソルトスタッフ。元々はさまざまなソルトターゲットを楽しんでいたが、ここ数年ほどはチニングに熱中。日々、新しい釣り場やパターンを開拓している。
潮がほとんど動いていないタイミングに釣れた2尾目、40センチ。「ずっと同じところでアタリがあって、しつこくやってたらズルで掛け損ない、止めたときにきましたね」。
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