黒潮の影響を受けるエリアは真冬でも水温15℃前後の場所がある。こういう場所であれば、厳冬期でもライトゲームが楽しめる。とくに私がホームとしている外房エリアは、この黒潮が入ってくることでメバルとアジなどといった垂涎のターゲットが狙えるのである。
外房ならメバルもアジも両方狙える
ライトソルトゲームの2大ターゲットとなるアジとメバルを今回は外房から1日で狙うことにした。首都圏からも近くハイプレッシャーの房総半島は四国や九州のようにパラダイスではないが、当日の潮汐や気象状況を踏まえてのポイント選びをして効率よくラン&ガンすればでかアジ、でかメバルの両方を狙うことができる。
メバルは成長が遅いため大型の数は少ないが、釣り人があまり狙わないポイントには残っていることも多い。特に磯はメバル狙いでは手つかずの場所も多く、実はまだまだ未知のポイントがある。釣れる保証のない新規開拓はメンタル的にも難しいところがあるが、今後の財産になる。ネットの釣果情報を頼りにするのもいいが、自分なりにポイントの条件などを考えて見つけ出したポイントでの1尾のうれしさは格別だ。それを繰り返していけば初場所でも「釣れる」「釣れない」のイメージができるようになり、釣り人としてのレベルが上がっていることに気づくはずだ。
さて、話を房総半島に戻そう。太平洋側の外房ではアジは通年狙えるが、メバルのハイシーズンは水温が下がる冬。例年では年末年始ごろにプリスポーンのお腹パンパンのでかメバルがよくヒットする。今回の釣行は午後の明るいうちからスタートし、まずは夕マヅメのアジ狙い。漁港の出入り口となる堤防の先端から狙った。
ここではでかアジの期待は薄いが、群れが入っていれば20㎝前後のアベレージサイズが連発することも多い。この日も群れが入っていたようで、マヅメ前の明るいうちからアジが連発した。リグは2g程度の重めのジグ単で飛距離を出して広範囲を探り、ボトム~中層をシェイキングしながらのリトリーブでバイトが多発した。
ベイトフィッシュを捕食している状況であればジグヘッドのウエイトは重くてもバイトすることが多く、1g以下のジグ単よりも圧倒的にサーチのスピードと手返しがいい。軽いジグヘッドしか使わない人も多いが、状況に合わせてウエイトを使い分けることが釣果アップのコツ。
さらに広範囲を探るためにタックルを変え、ダウンショットリグで遠投し沖にいるかもしれないでかアジを狙う。
こちらもすぐにヒットするが、なかなかサイズアップには至らない。沖でヒットしたアベレージサイズを寄せてくるときに途中で根掛かりのように動かなくなった。その数秒後、グングンと重い生命感が伝わる。「何者かにアジを喰われたな」とすぐに理解し、丁寧に寄せてくると姿を見せたのは良型のヒラメ。アジの口に掛かっていたジグヘッドがヒラメの口内で外れ、運よくヒラメの口に掛かったようだ。ネットが無いため、100メートル以上離れた場所にあるスロープまで引き連れ、なんとかランディング成功。65㎝の肉厚の寒ビラメであった。
この日は短時間で効率よくメバルを狙っていった。
外房でかメバルは穏やかな条件が有望
メバルは現在ではシロ、アカ、クロの3種に分けられているが、外房で狙えるのはシロメバルとアカメバルの2種。この2種は比較的定着性が強いため、メバル狙いの釣り人が多いポイントでは大型に成長する前に釣りきられてしまう。そのため、でかメバルを狙う際は人があまりやらないポイントを狙うのが基本だ。
メバル狙いの人がやらないところといえば磯。関東ではメバル人気の高い三浦半島などでは磯から狙う人も多いが、外房で磯からメバルを狙う人はほとんどいない。青物、シーバス、石鯛、メジナなどを磯から狙う人は多い一方で、メバルはほぼ手つかずといってもいいほどだ。
外房にはたくさんの磯があるが、闇雲に狙うだけでは効率が悪い。そこで磯の地形でポイントの良し悪しを判断する。その地形というのがワンドや入り江、船道といった場所。
これらに共通するのは比較的「穏やか」ということ。磯がワンド状に切れ込んでいるところは波が直接当たらず流れも弱い。両側が浅い平磯になっている船道も、周囲の浅い平磯が天然の消波ブロックとなり穏やかになる。
なぜこのような穏やかなポイントが狙い目になるかというと、大きく2つの理由がある。1つは産卵場所であることだ。
メバルは体内で卵をふ化させて稚魚を産む卵胎生の魚。遊泳力の低い稚魚にとっては波や流れがある場所での産卵は不向き。そのため、ワンドなどの穏やかな場所で産むと考えられる。さらに、海藻が生えているところはなおよし。隠れ家となる場所も多く、生存率も上がるため稚魚を産む場所としては最適なのだ。
もう1つの理由はベイト。メバルの稚魚と同様、小さな魚にとって波と流れがあるところには居づらいため、穏やかな場所に集まる。また、大型魚に捕食されないように夜になるとワンド内などに集まってくるため、このような条件の場所にはベイトフィッシュが多く集まり、でかメバルもそれを狙って集まってくる。
磯だけでなく、実は漁港からもでかメバルは狙える。やはりキーポイントは「人がやらないところ」なので、外側の消波ブロック帯や海藻帯など、攻めにくいポイントにはでかメバルが残りやすい。さらに磯と同様で穏やかな条件が重なればベスト。当日も堤防から穏やかなエリアを狙ってでかメバルをヒットさせた。
カタクチイワシなどのベイトが群れているポイントは有望。
でかメバル狙いではルアーを見せすぎない
当日の流れは、夕マヅメにアジを連発したあと、陽が落ちたところでメバルへシフトするというものだった。
この日は夕方が満潮で深夜に潮が大きく下がる日。潮位が下がる前に漁港の外側に隣接する入り江の中を狙った。
リグは1.5gほどの軽めのジグヘッドの20㎝ほど上に3Bのガン玉を数個セットしたスプリットショットリグ。
まずはワンドの中に向かってキャスト……はせず、足元の護岸際をタイトにトレース。手前から狙うのが基本だ。すると、すぐにショートバイトがあった。また同じところにキャストしたくなるが、ここはいったんガマンして他の方角へキャストして探る。
数分後、先ほどバイトがあったところを通すと今度はヒット。なかなかの重量感のある引きを見せた後、足元まで来たところで抜き上げると29㎝の良型メバル。普段は25~27㎝ほどが多いポイントだが、このサイズはうれしい誤算。激戦区といえる外房の漁港の足元でもこのようなメバルがいるのだ。
ヒットさせられた要因は最初のバイトの後に深追いしなかったことが考えられる。でかメバルは警戒心が強いため、何度もルアーを通してしまうと完全にスレてしまう。少し時間を開けることで警戒心を抱かせず次のバイトに持ち込むことができた。
その後はアジ狙いを挟み、潮位の下がったタイミングでメバル狙いで磯へ向かった。
この磯は漁港の船道の両サイドが浅い平磯になっており、潮位が下がると船道を残して磯が露出するポイント。普段は海に沈む磯のため、限られたタイミングでしか釣りができないため、メバルも数多く残っているというわけだ。
リグは先ほどと同様のスプリットショットリグで、船道を横切るようにキャストすると足元のブレイク付近でヒット。サイズは26㎝ほどとハイシーズンに比べてやや小ぶりだが、やはりメバルは入っている。その後も船道の中ほどのボトムから少し上で26~27㎝を立て続けに2尾追加。狙いの尺は出なかったものの、タイミングよくポイントを回ったことで短時間のうちに合計4尾の良型メバルをキャッチできた。
夕マヅメまではアジングで数釣りを楽しんだ。
でかアジ狙いのカギはディープ隣接
魚は大型になると沖の深場に移動するのが一般的だ。アジも同じで、40㎝ほどのアジを船から狙うときには水深が50m以上の深場を攻めることが多い。
しかし、外房エリアは比較的遠浅の地形が多く、沿岸にでかアジが居着くような場所は皆無といっていい。そんな外房からでかアジを狙うにはでかアジが回遊しやすいポイントを選ぶことが重要になってくる。
でかアジが沿岸に回遊する理由の多くはベイトの捕食だが、アジは大型になるほど魚食性が強くなるため、メインベイトは小型の魚類と考えてよい。また、仮にベイトフィッシュがいたとしても遠浅のポイントでは沖の深場からはアクセスが悪いため、沿岸まで回遊することはほとんどない。
つまり、でかアジを狙うとなると深場が隣接したベイトの多いシャロー帯が狙い目となる。
ただし、外房から狙えるサイズは最大でも35㎝ほどで、尺を超えれば上出来。稀に40㎝クラスが釣れることもあるが、狙って釣るのは今現在だと不可能に近い。
まず外房のなかで深場が隣接するエリアというのが勝浦~鴨川周辺。特に鴨川付近はディープとのアクセスがよく、外房のなかでは最もでかアジがヒットする可能性が高い。
勝浦周辺でも沖からカタクチイワシの稚魚などのベイトフィッシュが回遊すればチャンスはある。当日も夕マヅメに入った漁港にはシラスを追って20㎝ほどのウルメイワシやサバが回遊しており、ベイトはいたもののでかアジの回遊は残念ながらなかった。
次にでかアジ狙いで向かったのは鴨川エリアにあるワンド状のゴロタ場。
でかメバル狙いでも述べたが、夜のワンド内にはベイトフィッシュが集まる。深場とのアクセスのいい鴨川エリアにベイトフィッシュという条件が重なればでかアジが回遊してくる可能性が高いのだ。
ゴロタ場というのも好条件で、磯場やゴロタ場にはトウゴロウイワシの仲間が高確率で居つく。夜の磯に行くと波打ち際や潮だまりに5㎝ほどの小魚が群れているのをよく見るが、それがトウゴロウイワシの仲間のギンイソイワシなどだ。
カタクチイワシの稚魚は回遊にムラがあるが、トウゴロウイワシの仲間は常に沿岸にいるため、回遊してきたでかアジを足止めする効果もある。
当日狙ったワンドは深くても3mほどなのでシャローといってよいが、このようなシャローのワンドの場合は基本的に回遊を狙う。
そのため、ワンドの出入り口あたりでの回遊狙いが効率がいい。釣り方は扇状に遠投して表層から順にレンジを下げて攻める。活性の高いアジが多いため、アクションは小細工なしのリトリーブが基本。足元のゴロタが切れたあたりでバイトすることも多いため最後までしっかりとトレースする。
当日は尺アジは出なかったが、漁港で釣れるサイズよりも一回り大きなアジをキャッチできた。
磯場では体高のあるアジがほどよく釣れ盛った。
外房エリアの特徴
さまざまな地形からターゲットが狙える
房総半島のうち、外洋となる太平洋に面した海岸線のことをいう。磯、漁港、サーフ、河口など、様々なタイプの釣り場が存在し、ルアー、エサ問わずあらゆる釣りが可能。ルアーではヒラスズキ、青物、アジなどの人気が高く、メバルの釣り場としては意外と穴場である。
最近では釣り禁も増えてきてしまった。マナーを遵守しながら楽しみたい。
でかアジ、でかメバルの行動パターン
でかアジの普段の居場所は沖の深場。メインベイトはベイトフィッシュになることが多いため、深場からのアクセスがよくベイトの豊富なシャロー帯にでかアジが回遊することが多い。
でかメバルは釣り人の少ないところかつ、スポット的に穏やかなポイントに集まりやすい。磯のワンドや入り江、漁港では意外と足元の護岸際に居ついていることもある。
どちらも狙う時間帯はナイトゲームになる。
この日のマックスサイズは29㎝。尺アップには至らなかったが満足できる1尾だ。
磯場から遠投し、ボトム付近で食ってきたのは良型のアジ。
アジ、メバルのサイズアップのコツ
アジのサイズアップはニアディープのシャロー帯を狙う。深場とアクセスがよくベイトの豊富なシャロー帯はでかアジが回遊する可能性が高い。
大型のメバルを狙う時には人があまり狙わないポイントを攻める。なかでも潮位が下がった時にしか立てない磯はほぼ手つかずのため、でかメバルも残っている。
今回29㎝をキャッチできたのはミスバイトの後に深追いせず、いったん場を休ませたからだ。これでセカンドバイトに繋がった。
26 〜27㎝のメバルを立て続けに3 尾。外房は磯メバルの穴場だ。
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使用ルアーの基本と応用
アジングや小~中型のメバリングの基本リグといえばジグ単だが、サイズアップを狙うとなるとジグ単だけでは難しい場面も多い。でかアジはフィーディングで回遊するのを遠投して攻めことが多く、でかメバルも足元から探り始めるがその後は遠投して広範囲を探る。
アジングの場合はキャロやフロート、場合によってはダウンショットを使うと60~70mの飛距離を出せるため射程距離が圧倒的に広がる。でかメバル狙いもガン玉を追加することでラインを切らずにウエイトアップができボトム付近も攻めやすい。
メバル用
月下美人 SWライトジグヘッド鏃 SS パワーフック+カサゴ倶楽部 ガブリシャッド
アジ用
月下美人アジングジグヘッドTG+月下美人ピンビーム
メバルにもアジングロッド
アジングのジグ単用は6ft6inのやや長めのロッドに極細PEを合わせることで遠投してもわずかなバイトをとれるようにしている。リールは2000番の軽量スピニングリール。
キャロ、フロート、メバル用は7ft11inのアジングロッドを使用。リールは2500番にラインはPE0.4号、リーダーとしてフロロ3号を1mほど結ぶ。キャロやフロートの場合はハリスとして8Lb+6Lbを80㎝ほど結ぶ。
ジグ単、アジ用
〈ロッド〉月下美人EX AGS 66L-S 凛(RIN)
〈リール〉エアリティ ST SF2000SS-H
〈ライン〉UVF月下美人デュラセンサー +Si2 0.15号
〈リーダー〉月下美人フロロリーダー 3Lb
キャロ、フロート、メバル用
〈ロッド〉月下美人 AIR A 711M-T
〈リール〉エアリティ LT2500S-XH
〈ライン〉UVF月下美人デュラセンサー +Si2 0.4号
〈リーダー〉エメラルダス リーダー 3号
〈ハリス〉月下美人フロロリーダー 6Lb+8Lb(キャロ、フロート)
水温が高めの外房なら低水温期でもメバル&アジ両狙いができる!
1~2月は一年のなかで気温は最も下がる時期だが、外房は黒潮の影響を受けるため勝浦~鴨川周辺では13~15℃ほどの水温がある。この頃はメバルの産卵期になり、プリスポーンのでかメバルが沿岸に集まってくる。でかメバルがもっとも釣りやすい時期だ。
アジの適水温は17~23℃ほどだが、15℃ほどの水温ならハイシーズンに近い活性があり、例年だと大きな群れが接岸しやすい時期でもある。群れが寄れば日中に連発することもよくある。
この時期ならではの良型メバルを狙ってみよう。
外房で狙えるさまざまなターゲット
Profile
渡邉長士(わたなべ・たけし)
アジング、メバリングなどのライトゲームからシーバス、ヒラメ、エギング、そして磯のヒラマサまで、地元房総半島を中心になんでも狙うマルチアングラー。ダイワ、カルティバ、カトウ・オプトワークスからサポートを受け、釣り番組や雑誌などのメディアでも活動を続けている。
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