地元・千葉県外房エリアを舞台に、ダイワフィールドテスター・渡邉長士さんが強風や波といった厳しい自然条件に挑む。ジグ単からフロートシンカーへの戦略転換、豆アジ対策、荒れた海でのテクニックなど、状況に応じた柔軟なアプローチで良型アジを引き出した実釣の一日を追う。
「おまたせしました」とうれしそうに話す渡邉さん。この日は強風でジグ単では釣りにならず。そこでフロートシンカー「鯵天」リグのタックルで引きずり出したアジ。
風に翻弄された外房アジングの真髄を探る
2025年夏、千葉県・外房エリア。強い日差しと海から吹き抜ける風が、アジングには厳しいコンディションとなっていた。
ロッドを握るのは、ダイワのフィールドテスター・渡邉長士さん。狙いはもちろん、この時期に人気のターゲットであるアジだ。まずは軽量ジグヘッド単体(ジグ単)で釣りを始めたものの、強風と波の影響でルアーを狙ったレンジまで届けることができず、アタリもない。一方、隣ではエサ釣りの釣り人が良型のアジを次々と釣り上げていた。
「この風だと、ジグ単では狙いのレンジまでリグを送り込むのが難しいんです。ラインが風に引っ張られて、どうしても浮いてきてしまいます」と話す渡邉さん。風が一時的に止んだタイミングでキャストしても、カウントダウン中に再び風が吹き始めてしまう。これでは、アジからの反応を得るのは容易ではない。
風の影響を受けないキャストを心がけよう。
フロートシンカーで風を攻略
ここで渡邉さんは、リグを大胆に変更。選んだのはフロートシンカー「鯵天」だった。このリグは遠投性能とレンジキープ力に優れており、風や波がある状況でもターゲットの層を正確に攻められるのが最大の強みだ。
「中間リグを使えば、狙いたいレンジにしっかりリグを送り込めます。これでボトム周辺を丁寧に探ってみます」と渡邉さん。セットした「鯵天」のウエイトは9.5g。横風が強く吹く中でも、軽くキャストするだけで十分な飛距離が稼げた。
実際、中間リグのタックルに切り替えてからは、リーダーの長さを調整することで狙いのレンジを安定させ、潮になじませる繊細な操作も可能に。そして、夕マヅメ2度目の時合いが訪れると、繊細なバイトがロッドティップを震わせた。しっかりとアワセを入れると、銀色の魚体が水面を割って姿を現す。まさに、鯵天が引き出した価値ある1尾だった。
「お待たせしました。最初から中間リグでやっていれば、ここまで苦労しなかったんですけどね……」と、渡邉さんは苦笑い。どうしてもジグ単で釣りたかったようだ。
今回、強風の中ではジグ単が苦戦を強いられたが、あらためて中間リグの強みとは何だろうか。
ジグ単は感度が高く操作性にも優れている一方で、風が強い状況や遠投が必要な場面では不利になりがちだ。対して中間リグには、「飛距離が出せる」「レンジキープがしやすい」「自然なドリフトが可能」といった多くのメリットがある。また、中間リグ自体にウエイトがあるため、セットするジグヘッドは超軽量でOK。これによって、日中の警戒心が強いアジに対してもナチュラルなアプローチが可能になる。
渡邉さんはこう語る。「風のある日はジグ単に固執せず、中間リグへの切り替えが釣果を左右するカギになります」。
今回の実釣では強風に悩まされ中間リグの出番が多くなった。基本は足元周辺をシンプルなジグ単で狙い、沖攻略などで中間リグが出番となる。
ジグ単&フロートシンカー「鯵天」で房総アジング攻略!
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アジングのゲストで釣れてきたイサキ。渡邉さんはこのイサキを狙って釣ることができるという。
豆アジに翻弄される
今回の釣行では、夕マヅメからナイトゲームに重点を置いたプランを選択していた。しかし、日が暮れて常夜灯下での釣りが始まると、待っていたのは豆アジの猛攻。サイズが小さいためショートバイトが多く、なかなかフッキングに持ち込めない。
ここで渡邉さんが語ったのが「ナイロンラインの有効性」だ。PEラインに比べて伸びのあるナイロンは、アジがルアーをくわえた際の違和感を抑え、食い込みをサポートしてくれるという。
それでも、この日の豆アジの反応は非常にシビアで、掛けられない時間が続いた。そこで数釣りを諦め、良型を狙う作戦にシフト。渡邉さんはポイントの移動を決断した。
明暗攻略の精度こそ、秋冬の堤防アジングで差を生むのである。
基本はやっぱりジグヘッド単体リグ=ジグ単の釣りとなる。
荒れた水面を制し良型の連発劇
移動先はさらに風が強く、波も高かったが、渡邉さんはむしろその状況を好機と捉えた。タックルは「月下美人MX アジング66L-S」。月下美人ジグヘッドSSの2gに同じく月下美人の「アジングビーム」を組み合わせる。狙うレンジは水面直下だ。
風と波の上下動を利用しながら、ラインテンションを調整し、ワームを自然に漂わせてアピールした。その狙いが的中し、明確なバイト。波に揺られながらも確実にフッキングし、慎重にやり取りして良型アジをキャッチ。サイズは尺には届かなかったが、25㎝級が連発し釣果は上々。過酷なコンディションの中でも、経験と技術で安定した釣りを展開する渡邉さんの力量が光った。
「良型が狙えるシーズンに入りましたね!」とは渡邉さん。
荒れたコンディションでのコツ
風と波が強いと、通常の操作ではルアーの動きが不安定になりやすい。そんなときは以下の点を意識するといい。
●波に逆らわない:ロッドワークを控え、自然な揺れを演出
●水面直下を攻める:浮いている活性の高い個体を狙いやすい
●適切なジグヘッド選び:レンジを保てる重さを選ぶ
渡邉さんは「荒れているからこそ、アジの警戒心が緩む」と語る。自然の動きを活かすアプローチこそ、荒天下での好釣果への近道だ。
堤防アジングではキャスト後にカウントを取り、レンジを正確に刻むことが必要不可欠である。
夏の終わりに見えた“外房の可能性”
夕方以降、特に夜の時間帯に本領を発揮した、この日の外房アジング。風と波という厳しい自然条件に悩まされながらも、状況に応じた戦術を柔軟に使い分けることで、見事にアジを引き出した渡邉さんはこう語る。
「外房エリアは一筋縄ではいかない難しさがありますが、戦略的なアプローチを取れば、釣果が大きく変わるフィールドです。特に夕マヅメからの時間帯は、気温も下がって釣り人にとって快適なうえ、魚の活性も上がりやすい“ゴールデンタイム”になります」。
さらに、こう続けた。
「外房のアジングでは、“対応力”がすべて。ジグ単、中間リグ、ライン、ワーム……その1つひとつを、現場の状況に合わせて最適化できるかがカギになりますよ」。
あなたも、自分だけの“勝ちパターン”を見つけて、外房アジングの奥深さを体感してみてほしい。
ナイトの釣りに移行してからは快調に良型のアジを釣りまくった渡邉さん。
月下美人MXがリニューアル!
堤防アジングでは、タックル全体のバランスが釣果を左右する。軽量ジグ単を操作するには柔軟なソリッドティップの「月下美人MXアジングの66L-S」、強風時に使用した中間リグでは「月下美人MXアジング711ML-S」をセレクトしていた。
リールは2000番前後を基準に、ドラグ性能のよいものを選ぶと細ラインでも安心である。各要素を最適化することで、厳しい季節でも快適に釣りを展開できるのである。
ロッド:月下美人 MX アジング 66L-S/リール:ルビアス SF2000SS-H/ライン:UVF月下美人デュラセンサー+Si2 0.15号/リーダー:月下美人フロロリーダー 3Lb/ジグヘッド:月下美人ジグヘッドSS 2g/ワーム:月下美人アジングビーム 2inch
●鯵天タックル:月下美人 MX アジング 711ML-S
ロッド:月下美人 MX アジング 711ML-S/リール:ルビアス LT2500S-XH/ライン:UVF月下美人デュラセンサー+Si2 0.4号/リーダー:月下美人フロロリーダー 8Lb/ジグヘッド:月下美人ジグヘッドSS 1g/ワーム:月下美人アジングビーム 2inch/フロートシンカー:月下美人 鯵天R L9.5g
常夜灯周りの“明暗差”を攻略
ナイトアジングの定番ポイントといえば、常夜灯周りだ。夏場は豆アジが多く苦戦することもあるが、秋以降は良型アジも常夜灯周りで狙えるようになる。
このポイントでは、常夜灯に集まるプランクトンを捕食するアジをイメージしてリグを通すのが基本。特に、光の境目……いわゆる「明暗部」を狙うと、その周辺でバイトが出やすい。
明暗攻略の精度こそ、秋冬の堤防アジングで差を生むのである。
PROFILE
渡邉長士
(わたなべ・たけし)
アジ・メバルはもちろん、シーバス、ヒラメ、エギング、そして磯のヒラマサまで、地元の房総半島を中心になんでも狙うマルチアングラー。
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