沖堤根魚五目のススメ〜最も身近な遠征先・沖堤の魅力に迫る〜


5月の連休を目前にし、活性が急上昇してくる対象魚といえば根魚! 各種ハタにカサゴを交えて、がぜん楽しくなるこの時期、さらなる釣果を求めるなら「沖堤」という選択肢が浮かび上がる! だいじょうぶ、渡船にちょ~っとだけ乗っていればすぐ着きますって!

大型連休を1人沖堤で集中して釣りをしてみるのもおすすめだ。



沖にある堤防 名前のまんまだね!

 連休中はどこに行っても人が多く、釣りも思うようにできなかったという方も多いのではないだろうか。そこで今回は、地続きの堤防と比べて、ほかの釣り人とのバッティングが少なく、なにより釣果も大いに期待できる沖堤防、通称「沖堤」の魅力をご紹介したいと思う。

 沖堤とは、その名のとおり沖にある堤防(防波堤)のことだ。外洋から寄せる波や潮流から港を守る盾のような役割をはたすため、岸際から離れた水深のある場所や、潮当たりのいい場所に作られていることが多い。

 地続きの堤防でも、外洋の潮が当たるなどの条件が整えば一級ポイントとなることも多いが、こういった地続きのいいポイントでは、ベストの釣り座を確保するのはどうしても難しくなる。

 その一方、沖に浮かぶように設置されている沖堤は、堤防全体が沖のいい潮を受けていることが多いため、釣り座にあまりこだわらなくとも釣果を得られることが多い。また、青物などの回遊魚や大型の根魚など、地続きの堤防ではなかなか釣り上げることが難しい魚があっさり釣れてしまうことも、これまた多い。

 そんな沖堤への行き方だが、地続きではないため当然船に乗る必要がある。大多数のアングラーは、船宿が運行する「渡船」と呼ばれる船に乗り合い、水上バスのように送迎してもらうことになる。公共交通のように運行時間が決まっている、利用するための費用を支払う必要があるといった制約やコストは多少発生するものの、それを補ってあまりある釣果を期待していい。

 沖堤なら、地続きの堤防や釣り公園といった混雑しやすい場所ではまず味わえない、自分のペースでのゆったりした時間を楽しめるはずだ。遠征に近い釣果と大自然の息吹を、ちょっとした出費と時間ですぐに満喫できる点、これが沖堤最大の魅力といえよう。

潮通しがよく、どの場所でもポイントとなり得るのが沖堤の特徴のひとつ。

沖堤防とは、港を波などから守るために沖に設置された堤防だ。



沖堤行くときはここに注意

 普段の堤防釣りではなかなか顔を出さない珍しい魚種が釣れたり、数釣りや想定外の大型ゲストの登場を楽しめたりと、釣り人の心を弾ませる要素がたっぷり詰まった沖堤だが、コンクリートの人工構造物である点を除けば、ほぼ自然そのものの無人島と思っていい。トイレやコンビニといったおなじみの便利な施設は当然使えないので、事前の準備は必須となる。

 初めて沖堤にエントリーされる方には、料金や時間の確認を兼ねて、渡船宿のサイトを見てみることをおすすめしたい。釣れる魚やだいたいの季節、最近の釣れ具合やおすすめの仕掛け、そして釣り具以外に必要なものや手続きといった、さまざまな情報が書かれているからだ。

 あと、これは実際に行かないとわからないことなのだが、沖堤は高い足場から釣ることが多く、水面までの距離は常に離れていると思ってもらっていい。いつもの釣行と同様に、ライフジャケットなどの各種救命具は当然として、長めのランディングネットも用意しておいたほうがいいだろう。

沖堤防に渡るには渡船と呼ばれるシステムを利用することになる。




5月下旬からはロックが熱い!

 根魚は魚種によって接岸してくる時期が異なっている。ライトロックフィッシュ定番魚であるカサゴは一年中釣りやすい根魚だが、キジハタやアカハタ、オオモンハタなどのハタ類は地域によって多少異なるものの、5月下旬〜夏の水温が上昇するあたりが狙い目となる。この時期は産卵のため浅場へ接岸してくる習性があるため、一年のうちでショアから最も狙いやすいハイシーズンへと突入する。

 沖堤の場合、流れが当たる潮表(沖側)と穏やかな潮裏(岸側)が存在するが、そのどちらもハタ類を狙うことが可能だ。沖堤は足元から水深があるだけでなく、港や地続きの堤防と同じような基礎や捨て石などのストラクチャーが足元に入っている。障害物の影に身を潜める習性がある根魚は、そのストラクチャーに潜み、捕食のチャンスをうかがっていることが多い。

 これらをふまえ、潮通しのいい堤防の角だけでなく、堤防の基礎など見落としがちな足元を探っていくと、思いもよらぬ場所から根魚が飛び出してきたりする。釣果が伸びるのはもちろんのこと、視覚的にも楽しむことができる。

 時合いについていうと、ハタ系全般に見られる傾向として、朝夕のマヅメに行動範囲を大きく広げて積極的に捕食行動を取ることが多い。よってマヅメが数釣り・型狙いともに期待できる絶好のチャンスとなる。ベイトパターン、甲殻類パターンの両方を想定し、釣り場の状況に合わせたルアーチョイスで挑もう。

 ハタが潜んでいるであろうストラクチャーへのアプローチ、そしていきなり始まるハタとのパワーファイト! ロックフィッシュでしか味わえない、パワフルかつ奥の深いゲーム性を、より多くの方に体感していただきたいと思う。

自分のペースで広々とキャストできる爽快感。そして釣果も期待できるのが沖堤防である。

安定のカサゴはもちろんのこと、より大型の魚が釣れ始めるのが初夏である。




沖堤へのエントリー方法

時間や各種ルールは要チェック

 まずはインターネットを活用し「地名+沖堤」などのワードで検索、行こうと思っているエリアにそもそも沖堤があるのか、そこまで渡してくれる渡船宿があるのかを確認するところからスタートだ。目当ての沖堤まで渡してくれる渡船宿が見つかったら、次はホームページをチェックしよう。出船・帰船時間、沖堤のルール、釣果情報といった、沖堤によって異なるさまざまな情報が書かれている。もし予約が必要であれば、この段階ですませておこう。

 本文中でも触れたが、沖堤にはトイレやコンビニといった便利な施設がないだけでなく、風雨を避けられる屋根などもほぼないと思っていい。その一方で渡船の時間は決まっているため、一度渡ったら迎えの便が来るまでは帰れない。よって、雨具の準備や季節に応じた重ね着の調整、食料品や飲料、虫よけや防寒用カイロなど、野外で快適に釣りを楽しむための準備は万全に整えておきたい。

「沖」とついているが、地続きになっているおなじみの堤防と構造はほぼ同じ。ただし、沖から寄せる強い波や流れを受け止めるため、幅も広く壁面も高めに設定してあることが多い。

氏名、住所、電話番号を乗船名簿に記入する。どこの沖堤に誰が乗っているかを渡船宿が把握することで、置き去りなどのトラブルを未然に防ぐこと、万が一事故が発生した場合に関係各所がスムーズに対処できるようにすることが目的。これを記入しないと沖堤には渡れない必須の手続きだ。

乗り降り以外はこのようにベンチに腰掛けるなど、不用意に立って姿勢を高くするのを避けよう。

沖堤には「渡船」と呼ばれる船に乗って渡る。船体そのものは一般的な釣り船や漁船とほぼ同じだが、船首に注目。バンパーの役割を果たす古タイヤがとりつけられた舳先が、乗客である釣り人の出入り口となる。




実践攻略術 ロックゲームシンカー編

底を感知できるぎりぎりの軽さがベスト

 シンカーウエイトについては、底を感知できるぎりぎりのところまで軽くするのがベストだ。こうすることで根掛かりを極力減らせるだけでなく、フォール時間もより長くなり、ターゲットにしっかりルアーを見せて「食いの間」を演出できるようになる。ラインカット不要でウエイトを交換できるロックゲームシンカーを使用して、変化する状況に合わせた適切なウエイトセッティングを意識しよう!

 ワームについては根魚全般に効く甲殻類ワームが定番だが、ベイトフィッシュが目視できる状況であれば、小魚をイミテートしたシャッド系ワームでのスイミングアクションも効果的だ。どのワームを使う場合も、テンションフォールで岩礁帯の底を叩いてからのリフト&フォールが基本アクションとなる。フッキング後は根から引き離すようなパワーファイトを意識し、魚との真っ向勝負を思う存分楽しもう。

タングステンバージョンも登場!




ロックゲームシンカーのひみつ

回してロック! もういっかい回してアンロック!

●切らずに交換! ロックゲームシンカー

 ラインやリーダーを切る手間を省き、リグのウエイトをもっと手軽に交換できないか? そんな思いからトライ&エラーを重ねて誕生したのが、ロックゲームシンカーだ。上部にスリットを設けた独特の形状を持つシンカー本体と、あらかじめリーダーに通しておくカギ型のロックパイプの2パーツで構成されるロックゲームシンカーは、シンカーのスリットにロックパイプを通してからドアのカギを開閉するように回転させることで、リーダーをカットすることなくシンカーの脱着が可能になる。ハサミや工具は一切使わず、ものの数秒ですぐ終わる。タングステン製シンカーもあり、ウエイトだけでなく比重や硬さの違う鉛とタングステンを使い分けることも可能になる。

ハタ喰い・蟲(むし)と組み合わせよう!

 ロックゲームシンカーで、適正なウエイトを自由に使えるようになったら、次はフックとワームを選ぶ番だ。まずフックは、フックポイントとアイラインが並行で、根掛かりを大幅に軽減し、伸びや変形にも強いハタ専用フック「根魚狩りフック」がおすすめだ。そしてワームは、これから本格的にスタートするロックフィッシュシーズンに合わせ、ブレードを標準搭載したハイアピール根魚用ワーム「ハタ喰い・蟲(むし)」。

 カラーはマヅメや低光量時に効果を発揮するグローをあしらった「はらぐろピンク」「はらぐろチャート」「イソガニグロー」に加え、視認性の高い「スジエビパール」などをシーンに合わせて使い分けることで、これから盛り上がりを見せるロックフィッシュゲームを大いに楽しんでいただきたいと思う。

ロックゲームシンカー、根魚狩りフック、ハタ喰い・蟲を合わせたリグででかいカサゴが釣れた。シンカー、フック、ワームの位置関係がこれでだいたいわかるはずだ。

シンカー上部の黒い部分がロックパイプ。これを回転させることで、リーダーを切ることなくシンカーを瞬時に交換できる。


起伏の多い地形を好むキジハタ。本気で狙うとどうしても根掛かりが避けられなかったが、ロックゲームシンカーのおかげでそのリスクはだいぶ減った。




実践攻略術 魚子ラバ編

ライトでもヘビーでもない「ミドル」をカバー

 オフショアのタイラバはいろいろな魚種が釣れるリグだが、そのコンセプトをショアの釣りで活かせる魚子ラバも、同様にあらゆるフィッシュイーターに効果を発揮する。ボトムレンジや岩の隙間など狭い場所でも、ラバーネクタイがわずかな水抵抗を受けて揺らめいてアピール。メタルジグでは演出できない、ラバーならではのアクションは、低活性やスレた個体でも捕食に持ち込める強みを持っている。

 このルアーは、ボトムでの釣りを得意とすることから、根魚との相性は抜群だ。ライトとヘビーの中間であるミドルウエイトに対応した10グラム、15グラム、20グラムのウエイトの魚子ラバを、ロックフィッシュゲームの最前線アイテムとしてタックルボックスに忍ばせておきたい。

フックがむき出しのジグヘッド単体なぞ入れたら一発アウト。だが、こんな明らかにキツい障害物を根魚は好む。根掛かりは嫌だけど釣果はほしい。ん~どうしよう?

おっ小魚発見! これはいい釣果が期待できそうだ!





沖堤おすすめリグ&ルアー

ロックゲームシンカー&魚子ラバ

ロックゲームシンカー

 これは沖堤にかぎった話ではないが、ハタを狙ううえで意識したいのは、彼らが好むエサには小魚と甲殻類の2種類があるということだ。小魚と甲殻類を比べると、シーズンを通して甲殻類を捕食しているパターンのほうが多い。ということで最初に使うのは、ボトム付近の甲殻類を再現できるワームとリグだ。

 RUDIE'Sよりリリースされている、高強度とフッキング力を追求した「根魚狩りフック」に「ハタ喰い・蟲(むし)」をセット。これをラインをカットすることなくシンカーウエイトが交換可能な「ロックゲームシンカー」と組み合わせたリグを組むことで、幅広くハタ類を狙うことができる。

魚子ラバ

 ロックゲームシンカーを使ったリグで反応が得られない場合は、ウエイト追加でミドルゲーム(10グラム、15グラム、20グラム)にも対応となった「魚子ラバ」をおすすめしたい。ラバースカートに包まれた構造で、リグ全体を大きく動かすことが難しい狭い場所でも、艶めかしいアクションを出すことができる。足元の直下や敷石の際などに落とし込んでその場に止めておくだけで、最大限のパフォーマンスを発揮してくれることだろう。止めるだけなく、タダ巻きでスイミングさせる横の釣り、ボトムバンピングによる縦の釣りなど、アクション次第で縦横無尽に誘い出せる点も強みである。


RUDIE'S 魚子ラバ

ロックゲームシンカー同様、根掛かりを避けつつより多くの釣果を得るために開発された魚子(ぎょし)ラバ。誘導式シングルフックのハリ先をラバースカートがほどよくカバーしてくれるため、狭い穴に入れても根掛かりを避けられるほどだ。


こんな感じにフックが2本とも刺さってしまえばまずバレない。激しく首を振っても遊動式のフックがすべて吸収してくれる。




沖堤おすすめタックル

いつもの堤防より強めで

 初夏の力強い根魚を、沖堤といういつも以上のサイズが期待できる場所で狙うということで、タックルは地続きの堤防で使っているものより強めの製品を使いたい。7フィートから9フィート前後の根魚専用ロッドが理想だが、もし手持ちで代用するのであればMからMHクラスのシーバスロッド、ライトショアジギングロッドがおすすめだ。これに3000番クラスのスピニングリール、もしくはベイトリールを合わせる。メインラインはPE1.0号から1.5号、リーダーはフロロカーボン16ポンドから25ポンド前後をポイントに合わせて組む。


APIA GRANDAGE BRUTE STRETCH FOUR S88MH

メバリングロッドとはあきらかにパワーが違う根魚専用ロッドのGRANDAGE BRUTE(APIA)。長さとパワーは、やや強めのシーバスロッドやライトショアジギングロッドを思い浮かべていただければだいたい合ってる。

PEライン・ルーツ(ゴーセン)は1.2号で25ポンドの強度に設定されている。合わせるリーダーは、最大でもこれとほぼ同じ25ポンドのフロロを選ぼう。


●沖堤用タックル
〈ロッド〉APIA GRANDAGE BRUTE STRETCH FOUR S88MH
〈リール〉APIA VENTURA SPEED LUNKER CUSTOM 3012
〈ライン〉ゴーセン RooTS PE×8 1.2号
〈リーダー〉ゴーセン RooTS FC LEADER 16ポンドから25ポンド
〈シンカー〉RUDIE'S ロックゲームシンカー
〈フック〉RUDIE'S 根魚狩りフック
〈ワーム〉RUDIE'S ハタ喰い・蟲


こんなサイズのオオモンハタ、いつもの地続きポイントじゃなかなかお目にかかれない。そもそも、オオモンハタがショアから釣れるようなポイントは、場所取りも厳しい。ショアのように地に足を着けつつ、オフショアとほぼ変わらぬ条件の釣り場でサオを出せる沖堤、あなたもぜひデビュー!




Profile

金丸竜児(かなまる・りゅうじ)

福岡県在住。ルーディーズ代表&ルアーデザイナーをつとめるライトゲームのスペシャリスト。ロックフィッシュゲームの開拓者であり、この釣りの探求に日夜余念がない。