アフター5に楽しめる お手軽チヌゲーム


お手軽フィッシングは数あれど、「至近さ」という点では、街中に釣り場が点在するチヌゲームの右に出るものはないだろう。その至近さのいっぽうでチヌ(クロダイ)やキビレの力強いファイトが味わえるとあって、根強い人気を誇るこの釣りであるが、「明日の仕事や家族サービスに、できるだけ影響を残さない短時間勝負を目指しましょう!」と提案するのは……きちんと家庭を顧みながら釣りをする模範的な父親を目指す、馬上憲太朗さんだ。

強烈な引き味が魅力。



平野には河川が流れ、そこにはチヌやキビレがいる!

 メバルやアジを狙うとなると、水質のいい場所や人があまり入らないような離島へ行くのが好釣果を生むセオリーとなっています。特に都市部でメバル・アジを狙うとなると、釣れることは釣れるけど、よっぽどの好条件でなければ、思ったようにサイズも数も望めません。とはいえ移動時間を考えると、毎度離島や郊外に足を延ばすのも時間的に難しい場合が多いです。

 そこで狙い目となるのが、都市部でもお手軽に釣れるチヌ・キビレです。この釣りの魅力は、都市部を流れる河川でゲームが成り立つという点です。日本の多くの都市は平野部に広がっていますが、そのほとんどに一級二級の河川が流れています。チヌ・キビレゲームはこの河川を舞台にするので、仕事が終わった時間や、土日の隙間時間といった短時間でも遊べるというのが大きな魅力となります。

 さらに、このゲームは難しいテクニックは不要です。ボトムを取れさえすれば、誰でも簡単にターゲットを手中に収めることができます。時期やタイミングがよければ短時間で数釣りも堪能できる、ビギナーにとっても優しい釣りといえます。

 使用するタックルについてですが、3グラムから15グラム程度のリグをメインに使い、ライトなタックルで40センチ前後の魚を狙うため、かなりスリリングで小気味いい引きを味わえます。これもまた、根強い人気の理由のひとつとなっています。

こんな市街地のど真ん中で、迫力満点のライトソルトゲームが味わえる!



チヌ・キビレの年間スケジュール

 ここからは、チヌ・キビレのシーズナルパターンについて説明したいと思います。

 本格的な春を迎える4月から6月は、乗っ込みが終盤に差し掛かるため、チヌの食い気はいったん下がっていくと思われます。いっぽうでキビレの活性は水温の上昇とともに上がっていき、7月に入るとトップでも釣れるようになってきます。そのころからはチヌがアフターから回復を見せ始めるので、数釣りの季節となります。

 秋になると、私の地元である広島湾ではベイトが豊富になり、イワシを追い回す姿も見られるようになります。プラグへの反応もよくなるのもこの時期で、デイゲームでシーバスや青物に混じって釣れることもよくあります。河川のボトムゲームも健在で、一年のうちで最もたくさんのメソッドで釣れる時期となります。

 冬を迎えると、ボトムを意識した個体が多くなり、シャローには入ってきにくくなります。ブレイク付近で回遊を見せるため、ウエーディングに分があるゲーム構築となりますが、キビレがスポーニングに入るため、産卵前の荒食いの時期になります。いっぽうでチヌの釣果は少なくなっていくことでしょう。

 そして年を越して3月に入るとキビレがアフターに入っているため、この時期はチヌを中心に狙うことになりますが、この際はブレイク付近を遠投で狙うといいでしょう。そし5月にかけて水温が上昇するにつれてチヌ・キビレの活性も上がっていきます。特にチヌは産卵前の荒食いに入るので、釣りやすい時期になります。

これから夏に向けてキビレの活性が高まる時期だ。



ポイント選びで釣果は決まる⁉

 チヌ・キビレのボトムゲームでいちばん大切なのは場所選びです。基本的には干潟になる場所が好ましいのですが、干満差が大きくないとできない干潟は、全国的に見ると意外と多くありません。

 そこで注目したいのが底の地質です。シャコをはじめとした甲殻類は、サラサラな砂地よりも少しドロッとした場所のほうに多く生息します。そしてチヌ・キビレは干潟でなくとも、そういう場所であれば、エサを求めて集まってくることが多いのです。

 とはいえ、ヘドロのように足が埋まってしまうほど柔らかい場所になると、今度は甲殻類が少なくなります。少しドロっとしつつ、適度な硬さを保った砂泥質の砂地がベストです。

 では、どのようにしてそれを見極めればいいのでしょうか? ウエーダーを履いて実際に歩いてみるというのがいちばん信頼できますが、お手軽さが魅力のチヌ・キビレに対してそこまでやるのはちょっと……と思われる方も多いと思います。ならば実際にリグを投げてみて、ロッドに伝わる感覚で地質を予想しましょう。

 釣果があまり期待できないサラサラな砂地やヘドロのような泥地質では、ボトムをリグで引いたとき、地面の凹凸が手元までほぼ感じられません。いっぽう甲殻類が多くいるような場所では、ボトムの凹凸に引っかかりながら進んでいる感覚がゴツゴツゴツと伝わってきます。

 こういう場所はカキ殻も多いので根掛かりも多くなりますが、これを避けつつ、なるべくゴツゴツという感覚が伝わってくる場所を見つけることが、好釣果を生むポイントだと思っています。

チニング成功の秘訣はポイント選び。底質を見極め、どんどんラン&ガンしていこう。



アフター5の釣りにもってこい!

 では、最後にお手軽な釣行プランについて、実釣の様子をまじえてご紹介していきましょう。

 取材時は日没が19時ごろとまだまだ日が短い季節でしたが、これから夏に向け仕事終わりの時間でも明るい日も多くなることでしょう。

 まだ明るいうちにエントリーできるようであれば、まずはトップゲームを試してみてください。20時ごろには完全に日が落ちてあたりも暗くなっていると思うので、ここから約2時間サオを出す釣行プランの開始です。

 私がホームとしている広島市内にはたくさんの河川が流れ込んでいますが、その河川ごとにそれぞれ釣れるタイミングが存在します。潮位が何メートルのときは、この川の大体この場所で釣れる……というデータを積み重ねておくことで、短時間でターゲットを手中にできる可能性はグンと上がります。

 チヌ・キビレゲームのいいところは、再現性の高さも挙げられます。同じ条件・同じタイミングで同じ場所に入れば、同じように魚からの反応が見られることが非常に多いのです。また、すぐ行ける近場、かつ短時間の釣行なので、万が一釣れなくても翌日のリベンジが簡単にできることも見逃せません。

 22時くらいに納竿するとしても、4時間はゆうに楽しめます。あまり遅くならないうちに帰宅すれば、家庭への影響も抑えられます。こんなプラン、いかがですか?

お仕事帰りにちょっとチニング、いかがですか?




スピニングとベイトを使い分ける

 河川で釣りをするので、流れに負けない、あるいは味方にできるようなタックルが必要になります。私の場合は遠投性能が高いスピニングタックルと、ラインコントロールのしやすいベイトタックルの2つを持ち込むことが多いです。

 ブレイクが遠く、バイトも遠くで得られるときは、スピニングタックルで釣りをします。いっぽう流れが速く、ポイントへ流し込むような釣り方を多用する場合は、ベイトタックルで釣ることが多いです。どちらか一本を選ぶのであれば、より汎用性の高いスピニングタックルを持ち込むといいでしょう。


Silverado 20GSILPS-762ML(OLYMPIC)+ヴァンキッシュ C3000HGSDH(シマノ)

安定性と汎用性に秀でたスピニングタックル。


Silverado 20GSILPC-762ML(OLYMPIC)+メタニウムHG(シマノ)

比較的重いウエイトを使うチヌ・キビレゲームではベイトタックルの出番も多い。

シーバスや青物ならベイト、メバルやカサゴなら海藻帯や消波ブロック……チヌやキビレはこういった条件が整わなくとも釣れるのだ!

砂と泥の中間、甲殻類が好んで潜んでいそうな底の地質。ポイントに求められる条件はたったこれだけ! しかも、これを満たす場所は日本全国各地に広がっている。




初夏のチヌ・キビレおすすめルアー

Creeper Bug 2.2インチ(Aqua Wave)

 今回使用したのは、Aqua WaveのCreeper Bug 2.2インチです。このワームの特徴は、チヌ・キビレのボトムゲーム専用に開発されたサイズ感にあります。2.2インチというサイズは河川のボトムゲームにジャストフィットで、波動が強すぎず、かといってアピール力も損なわれていないというバランスの取れたものです。また、特徴的なアームの部分も波動が出すぎないものなので、強すぎる波動を嫌うチヌ・キビレに対しても安心して使えるデザインになっています。


Creeper Bug 2.2インチ(Aqua Wave)

エビフレーバー配合でくわえたチヌやキビレに違和感を抱かせず、スムーズにフッキングへ持ち込める点も見逃せない。

シンカーのアイに直接リーダーを通すのではなく、いったん管付きスナップを介して接続することで、シンカーの脱着がワンタッチでできるようになる。

派手めとナチュラル、どちらのカラーも可能性はある。どんな手でも打っていけるように準備。

この絶妙なボリュームがチヌやキビレを狂わせる!

安全な足場に立って釣る関係上、やや高い位置から取り込むことも多くなる。タモは必需品だ。

風格漂うチヌ。



馬上流・実践攻略術

ボトムを取ってあとは巻くだけ

 釣り方はとても簡単です。ボトムを取ったら、あとはひたすら底の凸凹をティップで感じながら一定のスピードで巻くだけです。だいたい1秒に1回転くらいのリーリングスピードと思っていただければ大丈夫です。なおチヌのアタリは、ショートバイトになることが多くなります。最初のアタリでアワせてもフッキングできないケースが多いので、しっかりとティップに重さが乗るまで待ち、そこからスイープにアワセを入れるようにするといいでしょう。連動動画もあわせてごらんください。


アフター5チニング動画はこちら⇓

スピニングもベイト同様、ロッドを保持するほうの手に伝わる感覚を逃さないようにしよう。

ルアーから手元までラインが一直線になるベイトタックルはアタリ感度が高い。

ロッドに角度をつけて構えることで、ティップにラインの抵抗がほどよくかかり、底の感覚が伝わってくるようになる。




Profile

馬上憲太朗(ばじょう・けんたろう)

広島・山口の瀬戸内海側をホームとするライトゲームエキスパート。メバル・アジメインに季節の対象魚と遊ぶ日々。ポイント開拓と釣技向上が日課。