大黒海づり施設でアジングチャレンジ〜バーチカルな釣りで攻略〜


神奈川県横浜市に3つ存在する海釣り公園のうち、「大黒海づり施設」は入江の出口付近に位置し、足元から10メートル前後の水深がある。すぐ沖にアジ船が浮いていることもあり、渡邉さんはバチコンをやりながら「ルアーでもアジが釣れるのではないか?」と考えていた。連日、全体で100尾から200尾程度の釣果が上がっていたが、ほとんどがコマセの釣りと推測。アジングのポテンシャルは未知数。チャレンジングな釣りとなった。




確実に釣りができ、情報はリアルタイム

 海釣り公園について、ファミリー層がサビキ釣りなどを楽しむ釣り入門の場というイメージを持たれることも多いが、施設の多くは水深があり潮通しもよく、魚影の濃い好立地。タイミング次第では大型の青物も狙えるなど、実際は幅広い釣りが楽しめるフィールドになっている。

 海釣り公園の大きなメリットの1つに“リアルタイムの情報”が得られるというのがある。特に回遊性の高いアジは群れの接岸が釣果を大きく左右するため、群れがいる場所で釣りをすることが大前提となる。普通の釣り場では自分の足でアジを探すことになるが、横浜市の各海釣り公園では毎日どころか、1日に何度も情報がアップされるためリアルタイムの情報を得られる。

 魚探しに奔走しなくても釣果情報を見てから行けば高確率でアジと出会うことができるため、有料の釣り場ではあるもののコストパフォーマンスにも優れたフィールドといえるだろう。

たとえ釣り公園でもライフジャケットは着用しよう。




ダウンショットリグで陸っぱりバチコン

 水深のある海釣り公園では多くの場合、ボトム付近にアジが回遊する。水深10メートルから20メートル程度であれば、アジはボトムから2メートルほどにいることが多い。

 となればジグ単ではなく、キャロやスプリットショットなどのシンカーを足したリグが手っ取り早くなるが、なかでもおもしろいのがダウンショットリグだ。

 ダウンショットは通常のアジングでは使われることの少ないリグだが、素早く沈められ、飛距離も出せるため水深のある場所や広範囲を攻めるときに効果的なリグ。近年盛り上がりをみせている船からのバチコンも、基本はダウンショット系のリグ。つまり、海釣り公園では本格的な「陸っぱりバチコン」が楽しめるのだ。

 わざわざ「本格的な」と付け足したのは、船のバチコンのように縦にも攻められるため。前述の通り通常のアジングでも沖を回遊するアジを狙う場合やサーフなどで遠投する場合にダウンショットリグは有効だが、ほとんどの場合横方向の釣りになる。しかし、水深のある海釣り公園では足元にアジが回遊することも多いため、船からのバチコンのようにゼロテンステイやシェイクからのポーズなど、繊細で多彩な攻め方が可能。

 もちろん足元だけでなく遠投して広範囲を探ることもでき、流れが強い場合でも流される前にボトムまで落とすことが可能。混雑していてもアジのレンジにルアーをアプローチできる。

 陸っぱりバチコンはまさに海釣り公園でもっとも理にかなった釣り方だ。

ドン深地形にある堤防回遊のアジを迎え撃つ

 今回訪れた大黒海づり施設は水深は足元で約7.5メートル、30メートルほど沖では水深は約17メートルにもなり、堤防の先端付近は潮も速い。

 整理券を受け取り、開場となる午前6時に入場。先端から30メートルほど手前の外向きに釣り座を構えた。

 まずは10グラムのシンカーを使ったダウンショットリグで広範囲をサーチするもヒットするのはカサゴのみ。周囲のエサ釣り師もアジはまったくと言っていいほど釣れておらず、スタッフの方に情報を尋ねたところ、午前中のアジの釣果はサビキ釣りで2尾とのこと。これは厳しい……。

 ということで、夕マヅメに狙いを絞り、それまでは対岸の木更津の公園でチニングタイム。30センチほどのクロダイを2尾キャッチしたところでアクアラインを通ってもう一度大黒へ。

 時刻は午後4時30分。そろそろアジが釣れ始めてもいい時間帯。流れが強くなっていたため、ダウンショットリグで10メートルほど先のボトム付近をシェイクしながらゆっくりとリトリーブするとバイト。この引きはアジっぽい!

 慎重にファイトして抜き上げると16センチほどのアジだ。釣り上げると周囲の人から一斉に注目を浴びたので、いかにアジが厳しい状況かがわかる(笑)。

 その後も同じパターンで同サイズのアジを追加。ジグ単も試してはみたが、潮が速く左右に釣り人がいる中でのジグ単は厳しく、バイトのみ。

 閉園時間の直前に最先端から灯台にある常夜灯周辺の中層をジグ単でトレースすると、狙い通り1投目でヒットするも、ここでタイムアップとなった。

身近にある親水公園ではこんなターゲットで楽しんだ。




コマセに寄ったアジは浮遊感がキモになる

 海釣り公園では連日多くの釣り人が訪れ、コマセも多く撒かれる。そのため、アジはコマセを学習し、潮に乗って流れるエサをメインで捕食するようになる。

 そのような状況で効果的なアクションが浮遊感のある動き。潮の流れや波によって周囲の海水と同調するフワフワ、ユラユラしたアクションにアジが好反応を示す。その浮遊感を出すために重要なのがワームの潮噛み。ボディが潮をつかみ、抵抗感の高いワームが浮遊感を生む。

 浮遊感のあるアクションは海釣り公園だけでなく、堤防からのプランクトンパターンにももちろん有効になる。

 そこでオススメするのが「アジングビーム」と「ブレーキンビーム」だ。

 アジングビームはボディに深めのリブが多数あり、ストレート形状でありながら潮噛みがいい。クイックなアクションを入れればベイトフィッシュライクな動きも出せる万能選手だ。

 ブレーキンビームはヘッドにあるアームでブレーキ力をアップさせたモデル。サイズは1.3インチと小型のため、コマセパターンやプランクトンパターンにピッタリのワームだ。

 基本は軽めのジグヘッドで浮遊感のあるアクションを演出するが、少し重めのジグヘッドを合わせるとフォールやリトリーブでアームがプルプルとアクションし、まるでベイトフィッシュの胸ビレのように動く。海釣り公園以外でもコマセを偏食しているなら有効だ。

足元からドン深で潮通しがよくさまざまな魚種が釣れ盛る。



ベイブリッジを眺めながらの釣りが楽しめる「大黒海づり施設」

 横浜港の入り口にある赤灯堤防の上に足場が設置され、長さ200メートル、幅17メートルあり両側で釣りが可能なため250人の収容人数がある。

 水深は足元で約7.5メートル、30メートル沖では約17メートルあり、潮通しも抜群。イワシやアジからクロダイ、スズキといった大型魚まで狙える。

 休憩所、自動販売機、売店、トイレ、200台の駐車場も完備され、1.1メートルの手すりがあるため、誰でも安全に釣りが楽しめる。

入場整理券は当日朝の5時から配布している。なるべく早く来ることで、早く入場することができる。整理券を受け取ったら、開場時間までに管理棟でチケットを購入しておこう。

トイレや手洗い場なども完備されている。売店もあり、小物や軽食を購入することができる。不定期だが、キッチンカーが来ていることもある。



ボトムから2メートルを効率よく攻められるダウンショット

 海釣り公園ではさまざまな魚種を多彩な狙い方で楽しめるが、今回はアジングに的を絞った。

 一般的なアジングであればジグ単が基本となるが、水深と流れのある海釣り公園ではダウンショットリグを使った「陸っぱりバチコン」も有効で、実際に周囲が釣れていない中ダウンショットでヒットさせた。

 東京湾では船釣りでもボトムから2メートルがアジの基本のレンジ。ダウンショットではボトムの少し上にいるアジを効率よく攻めることができる。

ダウンショットリグは縦の釣りを効率よく行なうことができるのが最大のメリット。大黒海づり施設のように足元から水深がある釣り場では有効だ。

ダウンショットシンカーは10グラム前後を使用していた。



キャロ用タックルは必携

 ジグ単タックルだけでなくダウンショットリグなどを扱えるキャロ用タックルも用意したい。

 ジグ単タックルは普段のタックルでかまわないが、ラインはPEに替えておくのがオススメ。PEの0.15号は細いため沈みも速く、比重の軽さと重めのジグヘッドと合わせることでデメリットは大幅に軽減できる。

 深場や沖でも小さなバイトを感知できる圧倒的な感度と、0.15号でも2.8ポンドという高い強度は大型のアジがヒットしても安心だ。

左右に他のお客さんがいるため、長い距離は流せない。潮流も速い。ジグ単だけでは攻略が難しい理由だ。



ジグ単も有効。ただし、長くは流せない点に注意

 ダウンショットだけでなく状況によってはジグ単でもOK。

 今回の釣り場では2.5グラムで着底まで40カウントほど。潮が左右に流れている場合は隣の方の邪魔にならない範囲で潮上にキャストし、フリーフォールでボトムまで落とす。着底する頃には潮下に流されているため、軽くテンションをかけてシェイキングなどのアクションを入れ、ボトムの少し上をドリフトさせる。

 潮下側の釣り人に迷惑をかけないようにするため、長くは流せないことからアクション開始から10秒程度がバイトチャンスだった。

ジグヘッドは月下美人アジングジグヘッドTG2.5グラムにワームはアジングビームのセッティング。



ダウンショットリグ用タックル

浮遊感を演出するパーツはアジングビームの深いリブとブレーキンビームのアーム。ともに水噛みがよく、コマセなどの漂うエサやプランクトンを偏食している場合に特に効果的だ。

小移動時にはダイワのルアーカバーを活用。お客さんが多いため、フック剥き出しは避けたい。

午前中はダウンショットでカサゴのみ。ボトムを探るとバイトが多いため、これはこれで楽しい。大黒では通年狙える。

まだ明るく、周囲はエサも含めて誰も釣れていない午後4時台に待望の1尾。この後、5時頃もう1尾追加。ともにダウンショットだった。

続々と他のお客さんが帰り始めた終了間際、先端外側の灯台の明かりの明暗を攻めるとすぐにアジがバイト。ジグ単で、堤防際をゆっくり巻いて食ってきた。

朝は不発だったが、夕方はバイトが多かった。この日は朝夕に集中する展開になったが、情報をチェックして主に夕方が釣れているなら、夕方だけを狙って釣行するのもいいかもしれない。












Profile

渡邉長士(わたなべ・たけし)

アジング、メバリングなどのライトゲームからシーバス、ヒラメ、エギング、そして磯のヒラマサまで、地元・房総半島を中心になんでも狙うマルチアングラー。ダイワ、カルティバ、カトウ・オプトワークスからサポートを受け、釣り番組や雑誌などのメディアでも活動を続けている。