ライトゲームでいちばんの支持を集めている対象魚といえばアジだろう。小型ジグヘッドリグで行なうアジングが人気絶頂だが、村上晴彦さんがとったアプローチはライトショアジギング(LSJ)で大型のアジを仕留めようというもの。村上流LSJスタイルをさっそく見ていこう!
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メガサイズをメタルジグで攻略!
PROFILE
村上晴彦
むらかみ・はるひこ:ブラックバスからソルトゲームまで、幅広いジャンルの釣りに精通する元祖カリスマアングラー。常吉リグ、ネコリグの考案者であり、独自のセンスで爆釣リグを発表し続ける。issei海太郎のデザイナーを務め、新製品の開発を手がける。
メタルアジングの条件
「アジは小型のジグヘッドリグで釣るもの」という考えは一般的だし、実際、多くのルアーアングラーも、いわゆる「アジング」スタイルでこの釣りを楽しんでいることと思う。しかしながら、実はアジはかなり大きなメタルジグ(40g以上)にも反応し、このルアーで狙って釣ることができるのだ。
それではどんな条件のときに、アジがメタルジグで釣れるのだろうか?
アジングをたしなむ方ならご存知かと思うが、アジは食性がよく変わるサカナの代表格である。具体的には、アジングはプランクトン類を食べているアジに対し、アミパターンのワームを送り届けて、繊細なアプローチで仕留めるスタイルだ。アジは通常、このプランクトン類を食べていることが多いので、アジングのアプローチは理にかなっているといえる。
そんあアジも、時にシラスなどのマイクロベイトフィッシュを追うこともある。そうなった場合は、やや大きめのワーム、重めのジグヘッドを使い、速いアクションで大胆に食わせるというケースもある。
これら以外にも、アジは大型化すると、イナダやカンパチといった青物ばりに、10センチ近くあるイワシやキビナゴを口にすることが多くなる。そんな状況になったとき、そのベイトフィッシュのサイズに合わせた20gとか40gのメタルジグを使った「LSJスタイル」で、これを狙って釣ることができるようになるのだ。
青物狙いのLSJの場合は、このベイトフィッシュの動向を気にするアングラーは多いものだ。小型のイワシやキビナゴは、港に出たり入ったりする傾向があり、例えばベイトフィッシュが港から外に出るタイミングで、それを求めて青物が港に接岸するという図式は一般的なもので、多くのLSJアングラーは、これを意識して釣行していることと思う。
アジ狙いのLSJでもこれは同様だ。つまりLSJでアジを釣るには、メタルジグサイズのベイトがたくさんいて、それを食える型のいいアジの群れが回遊することが条件となる。こういった釣りが成立する場所は、限られているように思われるが、実は全国各地で実例がある。
ただ難しいのは、アジの群れの動きが読めないこと。通常のアジングにおいても、アジというサカナは神出鬼没で、昨日までいたのに今日はいないということが頻繁に起こる。群れに当たるかどうかは時の運と言えるが、ここでキーとなるのは、やはりベイトフィッシュだ。それが多ければアジの群れが寄る可能性は高くなるし、逆ならば望み薄となるだろう。
もちろん、ベイトフィッシュが多ければ、アジ以外に青物やシーバスも集まってくるだろうが、そんな場合は来る者拒まずのスタイルで、五目LSJを楽しんでしまおう。
夕マヅメ。でかアジ回遊を狙い撃ち!「回ってきてよ!」
準備万端ででかアジチャレンジ!
さて、村上晴彦さんが実釣検証で訪れたのは九州北部・玄界灘に面する壱岐エリア。ここは黒潮の分流である暖かい対馬海流が流れ込み、アジのみならず青物やアオリイカ、根魚といった魚影が濃い地域で、でかアジの実績も高い場所だ。
過去にもなんとかここで釣果をモノにできた村上さんだが、時合いが極端に短いことが多く、あまりあれこれと試し事を実践できなかった。それでも、その過去の実釣データから、現状でベストと思われるタックルやルアーを持ち込んだ村上さん。
この場所は夕方にアジの回遊実績が高く、それを見越して、まだ明るいうちに現場に入り、準備万端で時合いを迎える寸法だ。
「前に来たときは、仕掛けの準備が間に合わなかったこともあったので、今回は余裕を持って現地入りしました」という村上さんは、柔らかめと少し強めの2本のタックルを持ち込んだ。調子の違うロッドが2本あれば、対応できるルアーの幅が広がるため、ゲームを優位に展開できる。これを持ち替えて、状況変化に素早く対応しようという狙いだ。
メインで使う予定なのは20~30グラムのメタルジグ。これにリアシングルフックとアシストフックを装着し、フッキング率の向上を狙っている。フックにはそれぞれティンセルを巻いてあり、アピールと同時に、アジに吸い込みやすい仕組みを構築。
さらには、グローカラーのメタルジグ、そしてグローじゃないメタルジグにもスポット的にグローシールを貼って、アピール力アップを狙った。「過去のここの夕マヅメの回遊は、思ったほど群れが大きくないので、目立たせたほうがヒットが増えるのでは?」という狙いである。
メタルジグ以外には、「アジってブレードが好きだよね」ということでスピンテールジグを持ち込んだ。これを使って、タダ巻きでのアジの反応を検証する意味合いだ。
さらにはフォローベイト的な扱いで、大きめのハネエビも用意した。
「過去の経験では、メタルジグに反応する時間が短くて、あっという間に時合いが終わってしまった感が強いんですが、もしかして少し小さめのルアーでボトムあたりをじっくりやれば、もう少し数を伸ばせるのでは?」という意図だ。
さらなる試みとして、1本のタックルには小型ワーム「サビキ的」をメタルジグの上に枝バリとして装着。メタルとサビキのどちらによく反応するのかなども検証するという、効率的なプランで準備を整えた。
この釣り場の傾向として、潮汐よりも「時間=明度」でアジの回遊があるため、明るい時短帯はカサゴとたわむれつつ、夕マヅメの時合いを待つことにした。前回来たのは12月下旬だったのに対し、今回の実釣は2月下旬。日没の時間が遅くなっているため、前回のデータはそのまま適用できないが、「日が沈んだあと、まだ空が薄明るい状態から時合い突入となるため、日没前から集中して臨戦態勢に入る段取りだ。
なるほど、あとから釣り場に入った常連のエサ釣り師は、のんびり構えている。まだ釣れない時間帯だということだろう。なお、アジというサカナはかなりの規模の群れで動くため、エサ釣り師の動向は時合いの判断材料になる。ある意味、そちらが釣れてから開始しても遅くはない。群れさえ回ってくれば、釣れるアジはたくさんいるのだ。
時合い待ちはハネエビでカサゴゲーム。
根魚玉&ジャコバグの組み合わせでカサゴと遊ぶ。碧ライトゲームオフショアは扱えるルアーの範囲が広く、重宝する1本。
短い時合いを効率的に釣る!
さて、15時頃から準備しつつ、日没前の17時30分頃から本格的に実釣開始した村上さん。最初はハネエビをセットしてボトム付近を探るが、アタってくるのは予想通りカサゴばかり。空もまだ明るくて、アジの気配はまったくない。
回遊アジが回ってきたかどうかの判断についていうと、最初はルアーに小アジがじゃれつくような感触があり、そのあとに本命の良型がアタってくるというケースが多い。恐らく、最初の小さなアタリは、群れの端っこにまばらにいる小アジのもので、本格的に密度の濃い群れのなかにルアーが入ると、良型が我先にガンガンアタってくるというイメージだ。
この回遊アジの群れというのは、おそらく我々の想像以上に大きなもので、一時的にそこらじゅうがアジだらけになっていると思われる。根拠としては、条件がいいときのデータによれば、投入後のフォール中にルアーを止めるアタリが頻発すること、フックアウトしてもすぐに追い食いしてくること、枝バリ仕掛けに複数掛かってくることなどが挙げられる。
しかしながら、そうなるまではなにも起こらない状態が続くため、何度経験しても、「本当に群れが回遊してくるの?」という疑心暗鬼状態にさせられるのもこの釣りならではの現象だ。そしてこの日も同様に、最初の前触れがあるまではそんな状態が続いた。
当日の日没が18時頃。晴天だったこともあって、この時点ではまだまだ空は明るい状態だ。それでも来るタイミングに備えて、キャストを続ける村上さん。
「あれっ、いまなにかが触ったような感触があったね。ひょっとして回遊が始まったかな」という村上さんは、引き続きキープキャスティング。するとほどなく、「フォールでアタった。きたよ!」と、ターゲットをヒットさせることに成功。かなり沖合いで掛けているため、取り込みに時間が掛かるが、引きを味わいながら寄せる時間も楽しいひとときだ。
岸際まで寄せて一気に抜き上げたのは、本命のでかアジだった。「やったー! どんどんいこう!」という村上さんは、時合いを逃すまいと次のキャストに入る。するとやはり、フォール中からアタリがあり、やり取り中にフックアウトしても、別のアジがヒット! というフィーバータイムに突入した。
「枝バリ仕掛けも試してみます」という村上さんは、ロッドを持ち替えて、これを投入。すると、アタリはあったものの途中でバレてしまった。回収してみるとワームがズレている。枝バリに食った証拠だ。「こっちにも釣れるんだね。あとはバラさないようにするのが課題だね」と、引き続きキャストを続ける村上さん。
こんな状態で2尾の悠々尺オーバーを含む3尾のアジを手にした村上さんだったが、その後はアタリがまばらとなった。アタり始めからの数分間で回遊のピークが過ぎたようだ。
「ちょっとアプローチを変えてみます」という村上さんは、メタルジグを外してハネエビをセット。ボトム付近まで沈めてダートで誘うと、これにもアジが食ってきた。ハネエビのダート幅はかなり大きくスピーディーなのだが、これに食ってきたということは、このアジの活性が高かった、もしくは低活性魚のリアクションバイトを誘ったということだろう。
そうこうしているうちにアタリの頻度がさらに低くなってきた。「ハネエビヘッドのまま、これにストレートワームをセットして、スローに誘ってみます」と話した村上さんは、このリグでも良型のアジを追加したが、その後はぱったりとアタリが途絶えてしまった。時合い終了である。あとで撮影した画像のデータを参照したところ、最初のヒットが18時34分、最後のヒットが19時8分。約34分間の時合いだった。
「今回は夕マヅメのタイミングを逃さずに釣れました。あーいい感じ。終わり!」と夕マヅメのひとときを満喫できた様子の村上さんだった。
そして明くる日の夕マヅメ。前日の再現を期待して挑んだが、ほぼ同じ時間に狙い通りに最初のヒット!「やった! やった!」とサカナを寄せてきた村上さんだったが、最後の最後、抜き上げに失敗してフックアウト。アジのサイズも35センチ以上はありそうだったので、その後のアタリを期待したが、バラしたあとは完全にアタリが途絶えてしまい、この日はノーフィッシュに終わってしまった。
「群れが少なかったのかな? バラしたからかな? 毎回うまくはいかないね」と、回遊の群れを狙う難しさを改めて痛感したのだった。
時合いに備えてラインシステムを再チェック。傷が入っていてバラしてしまっては悔やんでも悔やみきれない。
夕マヅメの回遊アジは速い誘いでアピールするのが吉。
高活性アジはフォールするメタルジグに何度もアタってくる!
フォールのときにアタリが集中する。ラインテンションは張らず緩めずで!
時合い後半、アタリが減ってきたらハネエビのリアクションでボトムを狙うと残りアジが拾えるかも⁉
時合い最終盤にはストレートワームを投入。この場合は通常のアジングに近いアプローチとなる。
村上流でかアジLSJスタイル!
狙い通り仕留めたでかアジ。シングルアシストがしっかり掛かっていれば、取り込み距離が長くてもバレることはない。
HARUHIKO CHECK!
20~30グラムのメタルジグを背負えるLSJタックルで対応!
マヅメの回遊アジの時合いは短いことが多く、今回のポイントでは5分、10分で終わってしまうことも珍しくない。そんな状況下で試したいことを次々に繰り出すなら、マルチタックルが有利。30グラムくらいまでのメタルジグの使用を想定するのであれば「碧ライトゲーム遠投」がいい。ただしルアー負荷は21グラムとなっているので、例えば30グラムの場合はロッドの負担をかけないゆったりしたキャストを心がけたい。
参考タックルその1
〈ロッド〉issei海太郎 碧 IUS-78L ライトゲーム遠投(スピニング)
〈リール〉スピニングリール2500番
〈ライン〉PE0.6号
〈リーダー〉フロロカーボン2.5号
HARUHIKO CHECK!
用意したメタルルアー
用意したルアーは実績十分のネコメタル、そしてサカナサカナスピン。実際のヒットはネコメタルに集中したが、アジはブレードにも反応がいいので、サカナサカナスピンも有効だ。村上さん的には、「操作するルアーが好き」という理由で使い手を選ぶメタルジグの登場場面が多いが、ブレードタイプのジグはタダ巻きが有効なので、より簡単かつ楽に釣りをしたい向きにはサカナサカナスピンがおすすめだ。
issei海太郎 ネコメタル(上ふたつ)
トップヘビーとボトムヘビーを臨機応変に使い分けられる定番メタルジグ。フックはアジに最適化したティンセル仕様。
issei海太郎 サカナサカナスピン(下)
カタクチイワシそっくりなメタルジグにリーフブレードを装着したスピンテールジグ。タダ巻きが有効。
HARUHIKO CHECK!
フォールのアタリを見逃さない!
ベイトフィッシュを追っている高活性なアジは、速いフォールに好反応を見せる。したがって、キャスト後のフリーフォール中、そして誘い上げたあとのフォール中はバイトタイミング。張らず緩めずのテンションを保ち、集中してアタリを待つようにしたい。群れが濃いと、ファーストフォールでのアタリが多いので、このときカウントを数えておき、次回以降も同じタナを重点的に攻めるようにすると数が伸ばせるだろう。
キャストのあと、シャクったあとは、ラインテンションを張らず緩めずの状態にしてアジのアタリに備える。
HARUHIKO CHECK!
アタリが減ってきたらフォローを入れる
ベイトフィッシュを追っている回遊個体の時合いは、そんなに長くは続かない。だんだんアタリが減ってくるので、そうなった場合はタナを深めにして探りを入れてみる。それでもアタらなくなったら、ルアーを変えてみる。今回の村上さんは、メタルジグ的に操作できつつ、サイズが小さい「ハネエビ」でボトム付近を探ってみた。左右にダートしてターゲットを誘うハネエビでアピールを続けていたところ、思惑通りにバイトをキャッチ。時合い終了間際に拾い釣りで数を伸ばすことができた。
issei海太郎 ハネエビヘッド太軸金鈎+ハネエビ1.5インチ
水深10メートル以上あるポイントを探っていたので、ウエイトは5g、そして3gをチョイス。これを左右に飛ばしてボトム付近でヒットを得た。
HARUHIKO CHECK!
ベイトフィッシュありきの釣り!
回遊のでかアジ狙いでは、ベイトフィッシュの存在が必須となる。これの規模が大きければ、それだけ回遊してくるアジの群れも大きくなり、いい釣果が見込めるだろう。ベイトフィッシュの存在は、明るい時間帯に目視で見つけることもできるし、それ以外では、ウミネコや鵜などの水鳥の動向に注目するといい。ナブラが出ていれば有望なこと間違いなしだが、そうじゃなくても鳥が時折海中に突っ込んでいたり、水面近くを飛んでいるようなら、その下にベイトフィッシュがいる可能性が高い。
釣れたアジが吐いたキビナゴは全長7センチくらい。これにサイズ感を合わせたメタルジグを選ぶといいが、この日はもっと大きなメタルジグにも好反応を見せた。
HARUHIKO CHECK!
取り込みのコツ
アジは口が弱くバレやすいサカナであることはみなさんご存知の通り。このアジがキャスト後のファーストフォールでヒットしたら、50~60メートルの距離を寄せてこなければならない。これは実は容易な作業ではない。村上さんが実践しているのは、「ドラグを滑らせ気味にしつつも、ラインテンションは抜かない」という方法だ。これにより、アジの引きをいなしつつ、寄せてくることが可能だ。そして抜き上げも思い切って行なう。タモ入れにもたついていると、バラしてしまうことが多いもの。今回のタックルバランスだと、40センチくらいまでなら抜き上げ可能だ。ただし、それ以上となるとロッドの破損につながるため、タモで取り込むようにしたい。
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