アジングタックル1本で何魚種釣れる? 三陸エリアのライトソルト五目ゲーム

近年、アジが釣れるようになったことで注目の東北太平洋沿岸(三陸)。アジングタックルのみで漁港や堤防を釣り歩くと、アイナメやメバルなど東北でおなじみの魚種はもちろん、サバ、さらにはケンサキイカまで、多彩な魚が出迎えてくれた。アジングタックルの高い汎用性を生かし、三陸の魚に出会う旅が始まった。


アジを探して漁港や堤防をめぐるとそこはメバルやアイナメの楽園だった

アジングタックルの高い汎用性をフル活用

 ライトソルトゲームは王道のアジやメバルだけでなく、カマスやムツ、小型回遊魚、小型~中型の根魚など、さまざまな魚種が狙えるのが魅力のひとつ。現在は釣りが細分化され、ルアーフィッシングの多くは専用タックルが存在するが、前述したようなターゲットならアジングタックルやメバリングタックルを流用することができる。

 というのも、ライトソルトゲームのターゲットは20~30㎝ほどの魚が中心で、使うルアーはおおむね1~5g程度。フロートリグやキャロ、小型のメタルジグなどを使う場合も10g程度がMAX。アジング・メバリングタックルはこうしたターゲットのサイズ感、ルアーやリグのウエイトにマッチするため汎用性が高いといえる。

 ちなみに、アジングタックルとメバリングタックルの明確な定義の違いはないが、アジングタックルは高感度で操作性が高く繊細、メバリングタックルはパワーとトルクがありフッキングとキャストがしやすいものが多い。ただし、近年のメバリングタックルはアジング寄りのテイストになっているものも多い。

 アジングタックルはジグ単用とキャロ用に大別できるが、汎用性がより高いのはキャロ用のタックルだ。キャスト可能なウエイトの幅がジグ単用よりも広く、パワーやトルクがあるため幅広いシチュエーションに対応できる。

 一方のジグ単タックルは感度と操作性に特化させた繊細なタックル。合わせるラインは軽量ルアーでも飛距離が出るようにモノフィラ系のラインであれば1~1.5Lbという細いラインが使われるため、扱えるルアーはMAX3g程度が現実的だ。

 こういった繊細なタックルは本来は汎用性が低いのだが、ラインをPEに変えるだけで一気に汎用性が高まる。PEラインの太さは極細の0.15~0.2号を使うことで軽いルアーでも飛距離を出せ、伸びが少ないため操作性も高く好感度。そして0.15号でも強度は約3Lbとモノフィラ系の2倍ある。となれば、扱えるルアーのウエイト幅も広くなり、ターゲットのサイズもより大型が狙え、5g以下の小型のエギも使えるためライトエギングにも流用できる。

ジグ単でもダウンショットでも釣れたメバル。たまにいいサイズも混じるから気が抜けない。

こちらはジグ単のスイミングでヒットした40㎝に迫るアイナメだ。



漁港の足元だけでメバルのデイゲームが成立

底付近の黒い影の正体無限メバル状態に突入

 近年では海水温の上昇と温暖な黒潮の北上により東北太平洋側の海水温が例年よりも上がり、アジをはじめとして今まで釣れなかった魚が釣れるようになっていると前号で紹介した。

 過去、東北の太平洋側は本州ではもっとも水温の低いエリアで、本州最北の青森県よりも低水温というのが当たり前だった。というのも、青森県は日本海側を北上する暖流の対馬海流の一部が津軽海峡を回りこんで太平洋に抜けていくため、特に日本海側は海水温が比較的高いのに対し、太平洋側には寒流の親潮が流れるため岩手県の三陸周辺では冬場の水温は5℃を下回ることも多い。このような低水温ではアジも生息することができないため、これまでは「アジング不毛の地」とされていた。

 しかし、前述のような理由から海水温が上昇し、これまでは福島県辺りまでがアジングが成立する北限だったが、徐々に宮城県まで北上し、最近では岩手県までアジの群れが接岸している状況だ。

 7月に釣行した際はアジ以外にもカマス、ムツ、ショゴ(カンパチの幼魚)、ワカシ(ブリの幼魚)など関東で釣れる魚が普通に漁港から釣れた。現地の方に話を聞くと、沖ではヒラマサやタチウオも増えているようで、海が変わってきているのは確かなようだ。

 これまで釣れなかった魚が増えた一方で、変わっていない魚もいる。それがロックフィッシュ系の魚だ。なかでもメバルは牡鹿半島の各所で魚影の濃さを実感した。日中でも港をのぞけば黒い影がポツポツと見え、15~20㎝のメバルがまさに入れ食い状態となった。

透明度が高いエリアでは、海中をよく見ると魚影が確認できることもある。黒っぽく見える魚

影は大体アジかメバルだ。



三陸ではアイナメも健在イカも盛り上がっている

 そして関東ではめっきり少なくなったアイナメも東北では健在。水深のある堤防でショアジギをしている地元アングラーに釣果を尋ねた際、40㎝ほどのアイナメをキャッチしている人が複数おり、その堤防から3gのジグ単でボトム付近をスイミングさせると狙い通りアイナメをキャッチ成功。

 それでも、地元の釣り人によるとアイナメも減少傾向とのことだが、関東人からすると充分パラダイスと感じる。

 そして、アジと同様に近年で一気に増えたターゲットがケンサキイカ。やはり水温上昇のためか牡鹿半島から岩手県にかけての沿岸で大量に接岸するようになった。

 ハイシーズンは6~8月頃とのことで、6月と7月に訪れた際には常夜灯や集魚灯にケンサキイカの群れが集まり、地元の釣り人がまるでカツオの一本釣りのように次々にイカを抜き上げていた。

 そこでアジングタックルに小型のエギを付けて狙ってみると連続でヒット。もちろん食味も最高なので、夢中になる釣り人が多いのもうなずける。

 さらに、2024年はアオリイカの親イカが釣れ始めた「三陸エギング元年」で、実際に各所の漁港や堤防周辺に500g~2㎏のアオリイカの姿があった。エギング専用のタックルが必要にはなるが、アオリイカのエギングにおいても新たなエリアが誕生したといっていいだろう。

 コウイカも増えているようで、牡鹿半島の西側では各所にスミ跡があり実際に泳いでいる姿は何度も見ることができた。今後はアジやメバルのライトソルトゲームだけでなく、エギングの聖地となる日も近いかもしれない。

梅雨明けとともに狙えるターゲットのケンサキイカ。ライトタックルで狙えるのも嬉しい。

スミ跡があればそこは有望ポイントの証となる。



ジグ単タックルで、メバル、アイナメ、ケンサキイカ

 初めて牡鹿半島を訪れたが、最初に立ち寄った漁港でさっそく魚影の濃さに驚いた。堤防から1mほど離れたところに黒い魚影がポツポツと見えており、そこにジグヘッドリグを落とすとフォール中にバイトしてくる。一見すると簡単に釣れているように見えるが、これには実はキモがある。それがフォールだ。

 日中のメバルはニュートラルで活発にルアーを追わず、ルアーを見切ることも多い。見切られないスピードが重要になるのだが、横方向に速く動かしてもすぐに追うのをやめてしまう。そこで縦方向にストンと落としてフォールでリアクションバイトを誘う。1.5~2gのやや重めのジグヘッドにストレート系のワームを合わせ、ツンツンとキレのあるアクションで上昇させたあとにフリーフォールをするとフォール中にルアーをひったくっていく。

 アイナメのヒットパターンは水深のある堤防の付け根付近で、ボトムの1mほど上をジグヘッドリグでスイミング。

 先行者が先端付近でアイナメをキャッチしていたため、周囲にはアイナメがいるだろうとは思っていたが、先端付近は水深が15m以上ありジグ単では手返しが悪いため水深6~7mほどの場所に移動するとすぐにヒットした。

 タックルはジグ単用だったため2gのジグ単でボトムを切って使ったが、アイナメを本命にするならキャロ用のタックルを使った方が強度的には無難だ。

 ケンサキイカを狙って訪れた漁港には集魚灯を焚いた釣り人が大勢いて、明かりには胴長20㎝ほどのケンサキイカが集まっていた。

 地元の方はエギの上にスッテを付けた仕掛けで、軽くキャストしたら少し沈めて軽くアクションさせて釣っていた。両サイドでボコボコと釣り上げ、時には2ハイ同時にヒットするほど。しかし、自分の前には一向にケンサキイカが来ないため、持っていたすべてのヘッドライトで足元を照らしてみると次第に集まってきた。ところが2.5号のエギは大きすぎる模様。車内を物色すると1.5号を発見。すぐにヒットしたことから、やはりエギのサイズは重要なようだ。

 翌日は別の漁港にある常夜灯の周囲をキャスティングで狙ってみた。1.5号のエギを水深1~2mほどのレンジで、数回軽くシャクってからフォールさせると連発。タックルはジグ単用を使ったため高感度で、フォール中の小さなアタリも伝わり楽しい。この釣りにはアジングタックルがベストマッチかもしれない。

 今回はアジ、メバル、ケンサキイカをメインに狙った釣行だったが、すべて魚影が濃く三陸のポテンシャルの高さを実感できた。土地勘がない初めてのエリアでもこれだけ楽しめたのだから工夫次第ではさらに釣れる可能性が高い。今後は要注目のエリアになるだろう。

小ぶりながらもサバが高活性。



未踏エリアでの魚の探し方

目視と堤防や障害物の配置をヒントにする

 潮が澄んでいる牡鹿半島で魚を探すときは目視が手っ取り早い。堤防から少し離れたところの中層にいる黒っぽい影はメバルで、アジは背中が茶色っぽく見える。

 アジの魚影が薄いエリアでは漁港の出入り口でしか釣れないことも多いが、牡鹿半島では港内にアジの群れが溜まることもあるため、足元のシェードも要チェック。

 アイナメはある程度水深のあるボトムにいることが多いため目視できないが、周囲の地質などからボトムを推測し、ロックエリアであれば堤防からでも可能性はある。

地形から魚の居場所を割り出すのも有効な手段。アイナメなど岩やブロックなどに着く魚を探す目安になる。



アジとメバル、アイナメなどの釣り分け

 デイはアジもメバルもリアクションがメインの釣り方になるため、釣り方は大きくは変わらない。少し重めのジグ単でツンツンと軽くシャクったあとにフリーフォールさせてリアクションバイトさせる。

 アジとメバルの着き場は、メバルは堤防から5m以内の足元、アジは小さな漁港の中にいることが多いので、狙うポイントを変えることで釣り分けられる。

 アイナメを狙う場合は水深のあるポイントでボトム付近を攻める。専用タックルのようにパワーがないため、根に入られないようにボトムの少し上を攻めてキャッチ率を高めよう。

アジングタックルで挑んだため、無理なアクションはできないが、それでも十分に五目ゲームを満喫できる。



東北三陸ライトソルト五目タックル

 ジグ単ロッドはやや長めの66L-S凛と極細PEの組み合わせは遠投性能、感度ともに高く、強度は約3Lbあるため汎用性が高い。もちろんアジにもこのセッティングで使える。ジグ単タックルのリールは軽量で巻き感度も高いエアリティST SFにすることで、さらに感度を上げている。

 ダウンショットにはロッドがAIR AJING 711M-TにリールはエアリティLT2000S-H。ラインはPE0.4号にフロロ6Lbを約1m。ダウンショットならエダスはフロロ4Lbを20㎝ほど結束。10g程度のメタルジグなどにも使える。


ダウンショットリグタックル

〈ロッド〉月下美人AIR AJING 711M-T
〈リール〉エアリティLT2000S-H
〈ライン〉UVF PEデュラセンサーX8EX +Si3 ライムグリーンM 0.4号
〈リーダー〉月下美人フロロリーダー 6Lb+4Lb(エダス)
〈ルアー〉月下美人 ピンビーム月下美人 アジングビーム
    月下美人ブレーキンビーム



五目狙いのリグ

ジグヘッドリグ単体&ダウンショットリグ

 ジグ単タックルでもラインをPEにすることで高強度&高感度になり汎用性が一気に高まり、リグはジグ単だけでもアジ、メバルはもちろん、アイナメや小型回遊魚まで狙える。アジングだけをとってもPEラインのメリットは多数あり、特に水深のあるエリアでは感度と操作性のメリットはかなり大きい。

 沖や深場を攻める場合はキャロ用タックルでのダウンショットが活躍する。飛距離は抜群でフォールも速いため手返しよくサーチできる。


東北三陸のライトゲームの可能性

 これまで三陸のライトソルトゲームは「メバリング一択」だったが、アジやケンサキイカが増えたことで選択肢とゲームの幅が広がり、元々メバリングの土壌があったことで今後はさらに盛り上がる可能性がある。牡鹿半島はリアス式海岸で漁港も多く、関東や関西といった激戦区と比べると釣り場は多い。とはいっても、近年のケンサキイカブームなどで一部の漁港でトラブルも起こっている。マナー、モラル厳守で長く楽しめるようにしていきたい。




PROFILE

渡邉長士(わたなべ・たけし)

アジング、メバリングなどのライトゲームからシーバス、ヒラメ、エギング、そして磯のヒラマサまで、地元・房総半島を中心になんでも狙うマルチアングラー。ダイワ、カルティバ、カトウ・オプトワークスからサポートを受け、釣り番組や雑誌などのメディアでも活動を続けている。